研究課題/領域番号 |
26462018
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上野 富雄 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (70284255)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小腸再生伸長術 / 小腸粘膜下組織 |
研究実績の概要 |
ヒトで「小腸再生伸長術」が実現可能なのか、ヒト腸間膜に形態が類似したマイクロミニピッグを用い、再生小腸壁の形態・機能を明らかにすることを目的に、以下の実験を行った。 ●小腸間膜対側の小腸壁を5cm長軸方向に切開し、次いで切開部の間膜側小腸壁を、そこに流入する一葉の血管をそれぞれ温存しながら5cm切開し、さらに間膜とともに二葉に分けた。二葉に分けた小腸の口側および肛門側の一端を半周切離し、操作部小腸を長軸方向に二分した。そこで間膜ごと小腸の一葉を長軸方向にずらし、切離した半周の小腸の一端を1.5cm重ねるように縫合すると、長さ3.5cm×幅2cmの見かけ上の小腸壁全層欠損部が二ヶ所でき、そこに等面積のSIS(再生素材)を縫着し、小腸壁再生を誘導した。 ●6ヵ月後に標本を摘出し、組織学的検討ならびにin vitroで電気刺激、ムスカリン作動薬およびNO前駆体に対しての筋収縮、弛緩反応の評価を行った。また、再生部より抽出したALPの活性を正常部と比較し検討した。 【結果】腹膜炎、腸閉塞などの合併症は認めず9例生存した。再生腸管は平均6cmで、摘出標本では肉眼所見、組織所見で正常部と連続する粘膜の再生を認めた。固有筋層レベルでは全長にわたり平滑筋の再生を認めた。PAS染色で円柱吸収上皮を認め、微絨毛、杯細胞の存在も確認できた。S100染色にて神経線維が確認できた。消化吸収に関与する細胞の存在を認め、再生部でも同様の機能を有する可能性が考えられた。in vitroの実験ではムスカリン作動薬、NO前駆体に対してそれぞれ濃度依存性の収縮、弛緩反応を認め、電気刺激で周波数依存性に収縮した。筋弛緩・筋収縮を認め、神経組織も存在していることから、神経伝達を伴う筋収縮運動が起きていると考えられた。再生部のALP活性は正常部と比較し同等であり、生化学的にも正常小腸と同様の機能を有する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト腸間膜に形態が類似したマイクロミニピッグを用い、「小腸再生伸長術」を行い、小腸再生伸長術における再生小腸壁の形態・機能を明らかにした。当初の計画通り、概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の研究通り、今後は、マイクロミニピッグからSISを分離し、成長因子の保持状態を確認しながら、脱細胞化・フリーズドライ化の至適条件を検討し、強度を有したSIS移植片の作製技術を確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定旅費より安くなったため、若干の差額(13080円)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の旅費として使用したい。
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