内臓肥満が大腸癌の進展に与える影響とそのメカニズムの解析

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26462020
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 宮本 裕士 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (80551259)
• 研究分担者: 坂本 快郎 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00452897) ; 今村 裕 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医員 (70583045) ; 井田 智 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医員 (80583038)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 大腸癌 / 手術 / 内臓脂肪 / アディポカイン / レプチン

研究実績の概要

近年、肥満の増加に伴い大腸癌患者が増加している。また、内臓脂肪からはレプチン、IL-6、VEGF、TNF-αなどのアディポサイトカインが分泌され、炎症反応や癌細胞を増殖させることが報告されている。我々は内臓脂肪からのアディポサイトカインが引き起こす慢性炎症が大腸癌の悪性度に関与することを明らかにすべく、内臓脂肪と予後の関係、内臓脂肪組織及び血中でのアディポサイトカイン発現と大腸癌分子病理学的因子との関連や全身炎症との関連を検証することを目的とした。
大腸癌の診断で切除術を施行したStage Ⅰ～Ⅲの症例を対象とし2つのコホートブループで検証を行った。コホート1のグループにおいて、術前CTによって定量化した内臓脂肪量と予後との関連を検証した結果、女性においてのみ、内臓脂肪過多が無再発生存期間に負の影響を与えていることが判明した。コホート2のグループを用いて、内臓脂肪組織及び血中でのアディポサイトカイン発現と大腸癌分子病理学的因子との関連の解析を行った。この結果、内臓脂肪量と内臓脂肪からのレプチン及び血中レプチンは男女ともに有意に正の相関を示すことがわかった。さらに、女性では内臓脂肪からのIL-6の発現とも有意に相関した。内臓脂肪からのレプチン発現を高発現群と低発現群に分け、男女別に血清アディポサイトカインとの関連を検証すると、女性では高発現群で有意に血清アディポカイン（レプチン、IL-6）及び全身炎症反応（high sensitive CRP）が高値であった。男性では何の関連性も認めなかった。また、各種血清アディポカインと腫瘍の悪性度との関連性を調べた結果、脈管侵襲陽性は血清レプチン高値と有意な関係にあることが判明した。
以上の結果、内臓肥満はアディポカインを介して大腸癌の悪性度に関与していることが示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Recent Advances in Targeting the EGFR Signaling Pathway for the Treatment of Metastatic Colorectal Cancer. (2017)
  • 著者名/発表者名: Miyamoto Y, Suyama K, Baba H.
  • 雑誌名: Int J Mol Sci 巻: 18(4) ページ: pii: E752
  • DOI: 10.3390/ijms18040752.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Comparison of systemic inflammatory and nutritional scores in colorectal cancer patients who underwent potentially curative resection. (2017)
  • 著者名/発表者名: Tokunaga R, Sakamoto Y, Nakagawa S, Izumi D, Kosumi K, Taki K, Higashi T, Miyata T, Miyamoto Y, Yoshida N, Baba H.
  • 雑誌名: Int J Clin Oncol 巻: in press ページ: in press
  • DOI: 10.1007/s10147-017-1102-5.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Omental flap after pelvic exenteration for pelvic cancer. (2016)
  • 著者名/発表者名: Miyamoto Y, Akiyama T, Sakamoto Y, Tokunaga R, Ohuchi M, Shigaki H, Kurashige J, Iwatsuki M, Baba Y, Yoshida N, Baba H.
  • 雑誌名: Surg Today 巻: 46(12) ページ: 1471-1475
  • DOI: 10.1007/s00595-016-1348-y
  • 査読あり
• [学会発表] Polymorphisms in adipokine-related genes to predict treatment outcomes in patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC) treated with bevacizumab-based chemotherapy. (2017)
  • 著者名/発表者名: Yuji Miyamoto, Sebastian Stintzing, Wu Zhang, Shu Cao, Yan Ning, Satoshi Okazaki, Martin D. Berger, Mitsukuni Suenaga, Marta Schirripa, Shivani Soni, Satoshi Matsusaka, Dongyun Yang, Roel Gopez, Diana L. Hanna, Afsaneh Barzi, Hideo Baba, Volker Heinemann, Heinz-Josef Lenz.
  • 学会等名: ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium 2017
  • 発表場所: サンフランシスコ（アメリカ）
  • 年月日: 2017-01-19 – 2017-01-21
  • 国際学会
• [学会発表] 大腸癌における内臓脂肪とレプチンによる炎症の関連性 (2016)
  • 著者名/発表者名: 大内 繭子、宮本 裕士、織田 枝里、内原 智幸、問端 輔、八木 泰祐、黒田 大介、江藤 二男、中村 健一、徳永 竜馬、美馬 浩介、木下 浩一、岩槻 政晃、馬場 祥史、坂本 快郎、吉田 直矢、馬場 秀夫.
  • 学会等名: 第27回日本消化器癌発生学会総会
  • 発表場所: 城山観光ホテル（鹿児島県）
  • 年月日: 2016-09-16 – 2016-09-16