研究課題/領域番号 |
26462023
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小西 文雄 自治医科大学, 医学部, 客員教授 (20142242)
|
研究分担者 |
鈴木 浩一 自治医科大学, 医学部, 講師 (70332369)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | sessile serrated adenoma / 鋸歯状ポリープ / MSI大腸癌 / メチル化異常 / Axon guidance / AXIN |
研究実績の概要 |
鋸歯状ポリープの一亜型、sessile serrated adenoma(SSA)は、併発する癌組織への病理組織学的な移行帯の存在、あるいはその組織の腺腫、癌組織間の類似した遺伝子異常(BRAF 遺伝子変異など)からmalignant potential を有する腫瘍性病変であると考えられている。臨床病理、分子生物学的特徴からメチル化異常が大きく関与していると考えられているがその詳細は明らかではない。SSAのメチル化異常に関して、個々の遺伝子におけるプロモーター領域のメチル化異常などは数多く報告されているが、ゲノム全域にわたるメチル化異常の有無を網羅的に検討した報告はない。 我々は、鋸歯状ポリープとMSI大腸癌に共通するメチル化プロファイルに注目し、独自に開発したDNAメチル化アレイを用いて鋸歯状ポリープを介した発癌過程(serrated pathway)に関わる127の遺伝子を同定した。その1つであるAXIN遺伝子(大腸癌抑制遺伝子APCとともに複合体を形成しβカテニンの分解に携わる)は、メチル化の進行に伴い段階的に遺伝子の発現が低下し、鋸歯状ポリープを介した発癌過程、は鋸歯状ポリープを介した発癌過程(serrated pathway)に深く関わっている事を明らかにし学術雑誌に報告した。 H27年度は、メチル化アレイで抽出した遺伝子のアノテーション解析を行った。その結果、近年膵癌や大腸癌の発癌過程に関わる経路として注目されているAxon guidance pathwayにメチル化の異常が認められる事を明らかにした。同定されたAxon guidance4遺伝子のうちdihydropyrimidinase-like 5はMSI大腸癌及びSSAでともにメチル化されていた。また、SSAからMSIの発癌過程でメチル化の異常が認められた遺伝子群を同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は、メチル化アレイで抽出した遺伝子のアノテーション解析を行った。その結果、近年膵癌や大腸癌の発癌過程に関わる経路として注目されているAxon guidanceにメチル化の異常が認められる事を明らかにした。 同定された4遺伝子dihydropyrimidinase-like 2、Nuclear factor of activated T-cells, cytoplasmic, calcineurin-dependent 2、 slit homolog 2、 dihydropyrimidinase-like 5 (Drosophila)のうちdihydropyrimidinase-like 5はMSI大腸癌及びSSAでともにメチル化されていた。一方、残りの3遺伝子は、MSS大腸癌でメチル化されていることを明らかにした。また、SSAからMSIの発癌過程でメチル化の異常が認められた遺伝子群、fibroblast growth factor family 5,12,15、Laminin,alpha1,2そしてWntシグナル伝達に関わるwingless-type MMTV integration site family member 2を同定した。
|
今後の研究の推進方策 |
Axon guidance pathwayに関わる遺伝子群のなかでdihydropyrimidinase-like 5は、AXIN遺伝子と同様にSSAから異常メチル化が認められ、serrated pathwayに深く関わっている事が推測される。 SSAからMSIの発癌過程でメチル化の異常が認められたfibroblast growth factor family 5,12,15やLaminin,alpha1,2そしてWntシグナル伝達に関わるwingless-type MMTV integration site family member 2の関与を踏まえ、serrated pathwayに関わるメチル化プロファイルを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末の支払い調整のため
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度消耗品費に繰り越し
|