研究課題
鋸歯状ポリープの一亜型、sessile serrated adenoma(SSA)は、併発する癌組織への病理組織学的な移行帯の存在、あるいはその組織の腺腫、癌組織間の類似した遺伝子異常(BRAF 遺伝子変異など)からmalignant potential を有する腫瘍性病変であると考えられている。臨床病理、分子生物学的特徴からメチル化異常が大きく関与していると考えられているがその詳細は明らかではない。SSAのメチル化異常に関して、個々の遺伝子におけるプロモーター領域のメチル化異常などは数多く報告されているが、ゲノム全域にわたるメチル化異常の有無を網羅的に検討した報告はない。我々は、鋸歯状ポリープとMSI大腸癌に共通するメチル化プロファイルに注目し、独自に開発したDNAメチル化アレイを用いて鋸歯状ポリープを介した発癌過程(serrated pathway)に関わる127の遺伝子を同定した。その1つであるAXIN遺伝子(大腸癌抑制遺伝子APCとともに複合体を形成しβカテニンの分解に携わる)は、メチル化の進行に伴い段階的に遺伝子の発現が低下し、鋸歯状ポリープを介した発癌過程、は鋸歯状ポリープを介した発癌過程(serrated pathway)に深く関わっている事を明らかにし学術雑誌に報告した。H27年度は、メチル化アレイで抽出した遺伝子のアノテーション解析を行った。その結果、近年膵癌や大腸癌の発癌過程に関わる経路として注目されているAxon guidance pathwayにメチル化の異常が認められる事を明らかにした。同定されたAxon guidance4遺伝子のうちdihydropyrimidinase-like 5はMSI大腸癌及びSSAでともにメチル化されていた。また、SSAからMSIの発癌過程でメチル化の異常が認められた遺伝子群を同定した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Int J Oncol.
巻: 49(3) ページ: 1057-1067
10.3892/ijo.2016.3583