研究実績の概要 |
新規消化管アデノウイルスAd65,Ad67の大腸癌細胞株に対する癌殺傷効果を検討することを目的に腸管指向性を探索してきた。 各種がん細胞株を用いたTCID50では、大腸癌細胞由来細胞株に対して高い指向性を示した。またFACS解析によりAd65はAd5の感染パターンに類似することを得た。さらにAd5, Ad9, Ad40, Ad65のウイルスを精製し、プラーク力価ならびにゲノム力価(定量PCR)の測定をおこなった。fiberのrealtime PCRでウイルス量を測定した。A549では同じ腸管親和性を有するAd9のプラークサイズはAd65よりも小さいことがわかった。 更にAd65についてファイバー改変型ベクターAd5/65-CMV-EGFPを用いてattachment receptorを解析し、HeLaやSW480では主にCARを用いることが明らかとなった。またAd65は(Ad9と同様に)CAR-dependentとCAR-independentの2種の感染経路があることがわかり、CAR-independentとして、ITGAV-KO hiPSCs を用いた実験からITGAVが示唆された。腸内環境での安定性や細胞内での複製効率が腸管tropismを規定しているかについて検討し、acid pHの安定性はAd5とAd65とではっきりした差が出ないことがわかった。 本研究をより大腸がんに特化するため、Colon cancer stem cellへの感染能(fiber-modified GFP vector)、増殖能(burst assay)評価を予定したが本年度は準備段階となった。また野生型Ad40, Ad5, Ad61, Ad65, Ad67などのacidic pHにおける安定性を検討することで、主な腸管指向性としてvirionの耐酸性を評価する準備をしている。
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