研究課題/領域番号 |
26462026
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
幸田 圭史 帝京大学, 医学部, 教授 (50260477)
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研究分担者 |
石田 康生 帝京大学, 医学部, 教授 (50151387)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低位前方切除術後症候群 / LARS / 3-D vector manometry / defecography / 直腸癌術後排便障害 |
研究実績の概要 |
直腸癌に対する術後排便機能障害は低位前方切除術症候群(LARS)として近年さまざまな論文、総論が見られるようになっている。2016年のDCRおよび2012年のLancet Oncolにおける総説では、LARSの成因や病態に関して今回の研究の発端となったわれわれの論文2つが引用された。その中ではわれわれの主張である、新たに造設された新直腸の運動能がLARSの発現に関わることが紹介されており、この考え方は認知されつつあると考えている。現在も臨床症例での術後1年目における残存大腸の運動機能を測定、同時に3D-vector manometryを用いた独自の肛門括約筋機能の測定、また術後のdefecographyを用いた画像解析などデータを集積を継続している。これら肛門括約筋機能、残存大腸の運動機能、そして排便造影での画像解析を総合的に判断して排便機能障害との関連性を検討している研究は少なく継続する価値が高いと考えている。またラットにおける外部神経切離モデルの作成とその大腸運動能の評価を継続している。モデルの作成には困難がおおいが、一部で運動機能のデータが得られておりさらにモデル作成を続けてデータを取得する必要がある。また手術に伴って新直腸には病理学的にどのような変化が生じているのかを主に免疫染色を用いて解析することを予定しているが、モデル作成が滞っているためにこちらもデータを収集することが難しい状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低位前方切除術をはじめとした肛門括約筋温存手術例に対する1年目の評価として残存大腸運動機能の測定、肛門括約筋機能の3-D vector manometryによる測定評価、defecogarphyによる動的な解析を続けており臨床データは順調に得られつつある。問題はラットを用いた低位前方切除術後の外部神経切離モデルの作成がなかなかうまく行かず、手術は慣れてきたものの腸管運動のモニタリングで納得できるデータの取得が数例で得られたのみである。データを増やして解析できるまでに集まっておらずこの部分で研究がやや滞りを見せている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き臨床症例で上記のデータ集積を続けて行き、多数例での解析を行いたい。現在までに得られた所見では、外部神経の切離範囲によって支配領域にある大腸のセグメントには過剰な蠕動運動が見られる傾向がある。その頻度は約40%ほどと思われる。これらの過剰な運動機能を持つ症例ではsevere LARSの発現頻度が高そうである。最も発現と関連性が強いのは3-D vector manometryで測定した全周性内圧を持つ肛門管の長さのようで、とくにincontinenceと相関があるらしい。またdefecographyでは液状便の把持が困難で、漏れを認識できないグループがあり、内括約筋の物理的障害ないしは特に交感神経の神経損傷との関連性が示唆される点などがデータ解析結果として示唆されている。今後もこれらのデータの検証と、新たな知見が得られるかどうかを継続して検討する予定である。 また、ラットを用いたモデル作成は継続して続けてゆく。顕微鏡下の手術で困難を伴うが、手術とその後のデータ取得がうまく行く個体もあり、今後も同様の手法で検討をしてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3-D vector manometryの機器メンテナンスが本年度はかからなかった点とラットの実験を主に行っていた人材が転出したため実験が一時的にペースが落ちた点などから余剰金が発生しました
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は新たに人材とともに計測と実験のペースを上げてゆく必要があり、そのために使用したいと思います
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