研究課題
本邦における大腸癌検診率は欧米と比べて低く、現在広く行われている便潜血検査より簡便かつ感度の優れた新たなスクリーニング検査が必要である。今回、簡便に収集可能な唾液や尿を用いて、そのバイオマーカーの探索を行なった。対象:解析に用いられたサンプル検体数は大腸癌276例、腺腫66例、対照群64例である。メタボロームは、低分子量代謝物の総体であり、液体クロマトグラフィーを用いた結果が判明している。測定方法は、唾液サンプルの処理は、検査直前に素磨きを行い、患者に唾液を採取してもらう。検体料としては、400μl 以上が必要となり、遠心管にメタノールとともに内包し、遠心をかけながら余計なタンパク質や脂質、核酸などを排除したのちに、分離定量装置にかけて定量を行う。25種類の代謝物の解析を行った。(結果)健常者と大腸癌患者では15種類、健常者とポリープ患者では18種類に有意差を認めた。健常者に対してポリープや癌を持った疾患群では今回測定した25の代謝物中19種類に有意差を認めた。一方で、ポリープと癌の患者では一種類のみの有意差が確認された。N1-Acetylspermidin に着目すると、大腸癌患者、ポリープの患者、いずれにおいても感度と特異度において非常に優れていた。癌のスクリーニングを目的とした研究であり、健常者に対し、大腸癌とポリープをもつ疾患群として一括りにして解析を行ったところ、AUC=0.848で先の癌単独と比べ、より優れた検出力が得られた。この結果より推測されるのは、現状での便潜血検査では検出できない可能性のある早期癌や、前癌病変であるポリープの存在を検出できる可能性が高いと考えられる。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 19 ページ: 765 778
10.3390