研究実績の概要 |
マイクロアレーを用いた昨年度の研究で示唆されたLINE-1ノックダウンによるmicro RNAの発現変化を、real-time RT-PCRおよびNorthern blottingで確認した。real-time RT-PCRおよびNorthern blotting いずれの解析法でも2倍以上の発現増加や減少を認め、かつLINE-1を高発現する大腸がん培養細胞、SW480とCaco2で共通した変化として3配列のmicro RNAが候補として選択された。このうちLINE-1ノックダウンにより発現増加を認めた2配列のmicro RNAを化学合成し、SW480とCaco2へトランスフェクション処理した。micro RNAのトランスフェクションによる細胞増殖の変化をMTT assayで解析したが、がん細胞の増殖能に変化を認めなかった。残り1配列のmicro RNAはLINE-1ノックダウンにより発現低下を認めたため、当該micro RNAに対するsiRNAを合成しノックダウンによる変化を解析した。その結果、当該micro RNAのノックダウンによりSW480とCaco2のいずれも増殖が抑制された。これらの結果から、当該micro RNAがLINE-1によるがん細胞の増殖に直接関与することが示唆された。 APOBECの発現性がLINE-1の機能に関与しているのかを確認する目的で、LINE-1高発現細胞であるSW480、Caco2とLINE-1低発現細胞であるHCT116、CaR-1でのAPOBEC発現性を解析した。APOBEC1, 2, 3A, 3B, 3C, 3F, 3G, 3H mRNAの発現性をreal-time RT-PCRで解析したが、LINE-1高発現と低発現細胞間でAPOBECの発現性に相違は認められなかった。この結果から、APOBEC蛋白の機能抑制を介した癌治療戦略に関しては短期間での成果は期待できないと判断しこれ以上の解析は中止した。
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