研究課題/領域番号 |
26462029
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小池 淳一 東邦大学, 医学部, 准教授 (30339155)
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研究分担者 |
島田 英昭 東邦大学, 医学部, 教授 (20292691)
牛込 充則 東邦大学, 医学部, 助教 (90408849)
鈴木 孝之 東邦大学, 医学部, 助教 (10385768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SEREX / RalA / p53 / 大腸癌 / 血清抗体 / 腫瘍マーカー |
研究実績の概要 |
大腸癌の血液腫瘍マーカーとして保険収載されているCEA、CA19-9、p53抗体の全てが陰性である約40%の症例では、治療経過観察・再発チェックに有用な血液検査法がないため、頻繁な画像検査が必要である。本研究課題であるRalA分子は、新規の癌抗原であると同時に癌抑制遺伝子の一種でもあることから、発癌の比較的早期の段階から癌患者血清中に抗RalA-IgG抗体が出現する可能性があり、従来の検査法を補填する新規のバイオマーカーとして開発することが本研究の目的である。 研究対象はあらかじめ倫理委員会承認を得ている臨床研究として治療前後の大腸癌患者から文書により本人の了解を得てサンプリングした保存血液である。 初年度である平成26年度は血清抗体測定系を開発し、健常者血清におけるELISA測定レベルの平均値+3SD をカットオフ値として陽性とした。 設定した基準値を利用して、平成27年度は大腸癌患者保存検体合計289症例について評価を行った。その結果、血清RalA抗体陽性率は14%前後であった。陽性率はおおむねステージが進行すると高くなる傾向があったが予後との関連性は明らかではなかった。 血清抗体の出現は、腫瘍組織抗原の発現と相関している可能性を考慮して、組織の免疫染色の準備を行った。保管血清サンプルのある手術施行患者を選択して、切除標本から組織アレイを作成した。 平成27年度は、免疫染色のための抗体の条件設定を行った。平成28年度は手術切除標本の免疫染色を行い、血清SEREX 抗体価との相関関係を検討した。切除手術前後、化学療法前後などの治療経過中の血清SEREX 抗体価モニタリングと臨床経過、治療効果との相関関係を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画4年間の3年目であり、保管血液検体の解析ならびに新たなサンプルの収集など当初計画に基づく研究計画を全て終了できた。また、組織アレイを用いた免疫染色を行った。以上より、研究計画はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
血清中のRalA抗体単独での陽性率は期待したレベルより低いため、当初計画通りに複数の血清抗体マーカーを併用することで従来の抗体マーカーを凌駕する検査方法として開発する予定である。4年目はさらに症例数を増やして解析を進め、同時に切除標本の免疫染色との相関関係を検討する予定である。予後解析をより正確にするため症例数を増やし、フォローアップ期間を延長する必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
血清抗体を同時に解析する手法を簡略化して、1回の解析あたりのコストを削減した結果、1サンプルあたりの解析経費を節減することができた。臨床病理学的因子との相関関係の解析には、より多くのサンプルを解析することが重要であるため、計画していたサンプル数よりも多くのサンプルを次年度に解析することとした。今後、大量の免疫染色を行うため、研究経費残額を次年度へ繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
4年目は解析対象症例をさらに増やす予定ですある。同時に切除標本の免役染色との関連性を検討する。同意取得済の血清サンプルは、大腸癌患者400名程度をデータベース化している。また、文書により了解を得た健常者の血清をコントロールして用いる。リンパ節転移或いは再発形式などの詳細な臨床病理学的因子との相関関係を検討する予定である。また抗がん剤治療に対する治療効果との関連性についても解析する予定である。 なお、解析対象症例については予後への影響を評価するために当初の予定よりも観察期間を延長する必要が認められる。
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