研究課題
本研究は【検討①:術後補助化学療法の効果予測因子の抽出】および【検討②:validation study】から構成される。【検討①】では、1999年から2005年の間に当科で根治手術を行ったStageIII大腸癌症例のうち、術後補助化学療法を施行した149例と未施行の85例を対象とし、癌幹細胞マーカー発現・EMT関連マーカー発現・腫瘍免疫の状況・病理組織学的悪性度規定因子を切除検体から病理学的に評価、各因子の有無別に抗癌剤の予後改善効果を解析し、それぞれ術後補助化学療法の効果予測因子となりうるか検討する。【検討②】では、2006年から2012年のStageIII大腸癌338例を対象とし、【検討①】で抽出された因子が同様に術後補助化学療法の効果予測因子となるかvalidation studyを行う。研究開始後2年が経過し、【検討①:術後補助化学療法の効果予測因子の抽出】の対象となるStageIII大腸癌患者の臨床情報の収集、切除検体の薄切、免疫組織化学染色を行い、因子ごとに術後補助化学療法により予後改善が認められるか解析を行った。結果、癌幹細胞マーカーCD133、上皮間葉転換のマーカーであるLaminin-5、tumor buddingが術後補助化学療法の効果予測因子となることが明らかとなり、学会発表を行った。とくにbuddingについては国際学会である2015 American Society of Colon and Rectal Surgeons(ASCRS) Annual Scientific Meetingにて報告した。また【検討②】としてのvalidation studyも開始、tumor buddingの術後補助化学療法の効果予測因子としての意義が確認でき2016年の消化器外科学会総会での報告を予定する。
2: おおむね順調に進展している
順調に【検討①】を進めることができ、癌幹細胞マーカーCD133、上皮間葉転換のマーカーであるLaminin-5、tumor buddingが術後補助化学療法の効果予測因子となることが示された。今後、【検討②】のvalidation studyについても検討をすすめる。
【検討②】の対象患者の臨床経過については継続的に情報収集するとともに、【検討①】で抽出された因子について同等の結果が得られるかvalidation studyをすすめる。同等の結果が得られない場合は、使用抗癌剤の相違、近年の高齢患者増加による対象患者背景の相違などが影響している可能性があり、これらを一致させて検討を行う。また、StageIIIa症例とIIIb症例を区別して検討することや、生物学的特徴の異なる右側と左側で区別することで臨床的意義が変化することも考えられる。血行性再発と局所再発についても発生機序が異なり、癌の性格に左右されるところが大きい。これらの背景や再発形式を区別して解析を進めることで、それぞれの予測因子としての重みが変化する可能性が考えられ、詳細に検討する必要がある。近年propensity score matchingによる検討が広く行われている。背景を均一化する際に利用できると考えている。
手持ちの残試薬も使用したため、使用額が低く抑えられている。
今後、抗体およびプレパラートなど消耗品の購入が必要で、また学会発表の機会も増すと予想され、使用額が増加すると考えられる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件)
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