研究課題/領域番号 |
26462035
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大城 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10535008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 肝臓 / 手術シミュレーション / ハプティクス |
研究実績の概要 |
正常な肝臓は術者の操作,肝切開により形態が変化するが、従来の肝臓の3Dシミュレーションモデルは剛性のモデルであり変形しない.既に開発済みの新肝切除エミュレータソフトは、肝臓を牽引・変形して肝切離面を展開する様子をリアルタイムに表現することができ,切離線、切離面に出現してくる亜区域枝の方向, 深さ, タイミングをリアルタイムに体感することが可能である。現在市販されているシミュレーションソフト、ワークステーションにはない斬新なシステムである。本エミュレータソフト開発は、2011年度から開始され、肝臓をリアルタイムに変形させながら肝臓切離をバーチャルに体現することが可能となった。本研究で開発する次世代型力覚体感型肝切除エミュレータシステムは、力覚装置とインタラクションしてバーチャルリアリティを体感することができる。それらのデバイスと連携させることで、より手術場に近い環境を構築することが可能である。筑波大学システム情報系知能機能工学域の研究室が行っている力覚提示装置を組み合わせられるよう共同で研究を進める。当システムは、市販のシミュレーションソフトにはない斬新な独創的なシステムである。本研究によって術前患者の手術予行が可能となり、若手外科医であってもスムーズに手術を行える。外科医の自立が早くなり、従来であればあと3年はOJTが必要な外科医でも手術ができるようになる。これは手術可能な外科医が増えることと同義であり、実際に3年前倒しされた場合は1万人に対して2000~3000人の増強を意味する。外科業界全体の底上げにも貢献することが予想、期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに開発済みの動く新肝切除エミュレータソフトは、肝臓を牽引・変形して肝切離面を展開する様子をリアルタイムに表現することができ,切離線、切離面に出現してくる亜区域枝の方向, 深さ, タイミングをリアルタイムに体感することが可能である。本年度は、力覚提示装置との統合を行った。Liversimのバーチャルな臓器を手や超音波メスなどで触った時に手に返ってくる力の感覚(力覚)をフィードバックするものである。 本年度の成果: 1. Liversimとの連携強化:バーチャル超音波メスによる切開動作入力を可能とした。映像系の開発としては、テクスチャマッピングによる肝臓画像の高精細化に対応した。 2. バーチャル超音波メスの開発:糸の張力制御による危険領域の力覚提示を行う。典型的な例として危険領域を提示した。危険領域進入時に危険領域外への力を提示を可能とした。糸巻取り機構による力覚提示システムを開発した。さらに、内蔵振動子によるCUSA振動覚を提示可能とした。 3. バーチャル肝臓:形状・硬さ変更の基礎的検討を行った。ユーザー動作への力覚フィードバックを可能にした。左手の操作の開発としては、肝臓ゲルモデルを開発した。ゲルモデルの位置を操作点を介してLiversimに入力し、ゲルモデルを原点への復元力をユーザにフィードバックするものである。 4. デモシステム:開発物を統合し、Hepatic Cockpitと名付け、2015年度の日本外科学会にて展示を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1. バーチャルCUSAによる肝臓表面の力覚提示 バーチャルCUSAによる肝臓表面を切離する際に手に感じる力覚をさらに詳細に提示できるように改良する予定である。具体的には、バーチャルCUSAを規定する糸の張力のコントロール性を増して詳細な動き、複雑な操作をバーチャルに再現するようなプログラムを開発する予定である。 2. 肝臓モックアップの改良 任意の形状・硬さのバーチャル肝臓実現のための基礎検討を行う。現在の構想として、非伸縮性バルーン群によるバーチャル肝臓を作成することを目指す。肝臓を構成する、個々のバルーンの硬さは内部圧力で制御される。また、個々のバルーンの大きさは中空パイプからの露出量で制御することが可能であり、肝硬変などの硬い肝臓から、正常肝の柔らかい肝臓まで硬さの表現が可能となり、よりリアリティのあるシステムに改良される。 3. Hepatic Cockpitの運用・改善 システムとしてユーザーが使用しやすいように、肝臓モックアップの移動を水平2自由度に限定・安定化させる必要がある。また、見た目を商品化を見据えて、下部の機構が目立たないデザインが必要である。また、可搬性が必要であり、分解組み立てが容易な機構にする必要がある。さらに次年度に医学系、さらに工学系の学会、研究会などで、積極的にデモンストレーションシステムによる展示を行い、ユーザーの意見を多く取り入れて、細かい改良点の抽出に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定額よりも、ややデバイスにかかる費用が低く抑えられたことが大きく作用し次年度にわずかだが繰り越し金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
力覚デバイス35万円、力覚デバイス組み立て装置40万円。 学会発表は、下記を予定している。福岡×3日間、熊本×3日間、札幌×3日間、神戸×3日間、計20万円。論文を作成し投稿する予定であり、下記を予定している。校閲10万円、論文投稿代20万円
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