研究課題/領域番号 |
26462036
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
久保木 知 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50571410)
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研究分担者 |
宮崎 勝 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70166156)
清水 宏明 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80272318)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / Pin1 / NF-kappaB |
研究実績の概要 |
当教室で根治手術を施行したHCC 166例でのPin1発現、Pin1の標的結合部位であるリン酸化NF-kappaB-p65(Thr254)発現、その結果でリン酸化されるNF-kappaB-p65(Ser276)発現、NF-kappaB活性などを評価したところ、Pin1発現はNF-kappaB-p65のThr254及びSer276のリン酸化、NF-kappaB活性亢進と相関し、Pin1のp-NF-kappaB-p65(Thr254)への結合がSer276のリン酸化を介してNF-kappaBを活性化すると示唆された。 続いて、Pin1の細胞増殖、血管新生、apoptosis、腫瘍浸潤、予後などとの関連を評価したところ、HCC内Pin1強発現群は弱発現群と比べて有意な腫瘍径増大、Ki-67発現増強、apoptosis抑制、血管新生増強、門脈腫瘍浸潤増強を認め、HCC内Pin1強発現は根治術後の独立した予後不良因子であると共に早期再発因子だった。Pin1はCks1発現増強によりp27(kip1)発現を抑制してcell cycleを亢進し、腫瘍増殖を促進した。 In vitroにてHCC細胞株のPin1 siRNA knockdownはNF-kappaB-p65(Thr254)及び(Ser276)のリン酸化の抑制を介してNF-kappaB活性を低下させ、腫瘍増殖・浸潤を抑制した。HCC細胞株をPin1 inhibitorであるJugloneで刺激すると、用量依存性にNF-kappaB-p65(Ser276)のリン酸化及びNF-kappaB活性を抑制し、cell cycle arrestを介して腫瘍増殖を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に26年度に施行予定としたHCCの臨床検体を用いたPin1を介したNF-kappaB活性亢進機序の詳細の解明、及び細胞株を用いたその機序の確認は概ね順調に経過している。Pin1の腫瘍増殖促進機序のもう一つの柱であるEMT誘導能に関してはまだ研究が進んでいず、また、FOXC1を介したPin1発現調節機序の解明も未だ不十分であり、それら面では研究は遅れているが、代わりに、本報告では触れていないが、膵癌におけるPin1発現や腫瘍増殖促進作用、予後不良因子としての働きなどを確認しており、このPin1によるNF-kappaB活性亢進機序を膵癌に応用する準備はすでにできている。また、来年度に行う予定の動物を用いたJugloneの抗腫瘍効果の表はについても、HCC細胞株皮下移植モデルの作成プロトコールは本年度にすでに確立しており、preliminaryの実験でJugloneの抗腫瘍効果が確認できている。よって、来年度はJugloneの抗腫瘍効果の分子生物学的機序の詳細を解明すると共に、膵癌や胆道癌などの他の癌腫についても追及していきたい。また、本年度に、別の主要な炎症性因子であるCXC chemokine-STAT3シグナルの膵癌腫瘍増殖への関与やCXC chemokineのdecoy receptorであるDARC発現の抗腫瘍効果も検討した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度: マウスにおけるHCC皮下移植モデルにてPin1 inhibitorであるJugloneとPiBを静脈内投与し、同薬剤の抗腫瘍効果を検討する。また、腫瘍組織検体を採取し、NF-kappaB活性関連因子、血管新生、cell cycle、EMT関連因子などを評価する。さらには、肝、腎、肺などの正常組織を採取し、同薬剤の副作用も検討する。 また、臨床HCC検体にて、EMT関連因子の発現を評価し、in vitroにてEMT関連因子誘導へのPin1の関与を評価する。
平成28年度: 膵癌や胆道癌などの癌腫におけるPin1を介したNF-kappaB活性亢進機序の詳細の解明をHCCでの評価方法と同様に施行する。
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