研究課題/領域番号 |
26462037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐子 尭 (唐偉) 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00313213)
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研究分担者 |
國土 典宏 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00205361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / c-Met / 化学療法剤 / 転移 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌は、切除適応外の症例の予後が依然として不調である上に、根治術後の高頻度な再発も深刻な問題となっている。本研究では、細胞表面に発現する受容体c-Metの活性化の阻害が、肝細胞癌の増殖や浸潤といった特性に及ぼす効果を検討することを目的としている。c-Met阻害剤の一種であるSu11274を肝細胞癌細胞に作用させると接着性が増強される形態変化を示したことから、細胞の浸潤への効果とそのメカニズムに関する検討を実施した。人工マトリゲルへの細胞の浸潤に対するc-Met阻害剤の効果を検討したところ、浸潤する細胞数の有意な低下をみとめた。細胞の形態変化や接着に関する種々の分子の発現量をWestern blot法で解析したところ、E-cadherinの発現がc-Met阻害剤の添加により顕著に上昇していた。このe-cadherinの発現上昇がin vivoでも検出されるか否かを移植癌モデルマウスを用いて検討した。肝細胞癌細胞由来の腫瘍を皮下に形成させたマウスに対してc-Met阻害剤を静注したところ、腫瘍組織においてe-cadherinの発現上昇を検出した。以上の結果から、c-Met阻害剤SU11274はe-cadherinの発現上昇を介して癌細胞の接着能の増強と浸潤性の低下を誘導する作用をもつことが示され、その効果は生体内でも誘導されることが示唆された。今後の研究では、他の種類のc-Met阻害剤が同様の作用を誘導する能力を有しているか否か、さらに肝細胞癌に対する抗癌剤として有用であるか否かに関してin vivoモデルを用いて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞癌に対するc-Metを標的とした抗癌効果に関して、当初予想していた増殖阻害のほかに細胞の形態変化や浸潤の阻害という新たな側面での知見を見出した。今後、更なるin vivoでの解析が必要ではあるが、c-Met阻害剤が肝細胞癌に対して有効性をもつことを示唆する成果を挙げることができている。従って、本研究は当初の計画通り進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に明らかとなった肝細胞癌の形態変化や浸潤の抑制に基づく抗癌効果に関して、種々の基礎医学的手法を用いたメカニズムの検討をさらに進行させる。そして、c-Met阻害剤が生体内で腫瘍の生育を抑制し、抗癌剤として機能するか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗及び成果を鑑み、当初予定していた学会発表等での成果の発表を延期したため、当該年度において旅費やその他の経費の使用が改革よりも少額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究によって本研究計画の内容に関する一定の成果を見出すことができた。次年度において、この成果に基づく学会発表や論文発表を実施し外部への情報発信を積極的に実施する。
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