研究課題/領域番号 |
26462038
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 潔 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20292906)
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研究分担者 |
進藤 潤一 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 助成研究員 (90701037)
大場 大 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10535529) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸癌肝転移 / 周術期化学療法 / 微小転移 / RAS変異 / APC |
研究実績の概要 |
本年度(平成27年度)は平成27年初に東京大学倫理委員会にて承認された研究計画をもとに、前向きな症例集積を行った。平成28年3月末現在、腫瘍組織・腫瘍周囲の正常肝実質の組み合わせを18症例集積することができた。同時に、KRAS・APCの変異同定方法について、具体的に検討し、その手法については、ほぼ確定できた。よって、今年度は集積症例での変異同定を開始する状況である。ただ、当初の見込みより東京大学における初発切除例が少なく、症例集積ペースが予定より遅れている。そこで共同研究者の進藤が所属する 虎の門病院でも症例集積を行うこととし、昨年度末より倫理申請の準備を始めた。今年度早々には承認を得て症例蓄積を開始し、それらを上記解析の対象に加えることにしている。 上記と並行して、当院における過去の大腸癌肝転移症例における肝切除症例を用いて、周術期化学療法と病理学的な微小転移の有無の関連についての後ろ向き検討を行った。母集団の背景因子にバラツキがあり、あくまで後ろ向き検討に付随する問題点はあるものの、周術期化学療法を行った上で手術を施行した症例では微小転移の頻度が減少し、その分布が狭まる傾向が認められた。これは術前化学療法を行って、切除のもちこめた症例のみを選択した結果であり、切除に至れなかった症例との比較がないため、直接周術期化学療法をやるべきという方針につながるわけではないが、一つの興味深い現象と考えている(論文執筆中)。さらに、術前CTにおける腫瘍の形態学的な変化によって、微小転移の有無を術前に予測できないか検討した結果、形態学的な変化が微笑転移の予測に寄与する可能性が示唆された(論文執筆中)。このように昨年度まで大腸がん肝転移に対する外科治療の可能性につき、後ろ向きのアプローチで知見を得てきており、今年度末には前向きアプローチによる知見が得られる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、大腸癌肝転移に対する初回肝切除を年間35症例として想定し、前向きに検体を収集することにしていたが、本年度は初回肝切除(2回目以降切除が多かった)が18例と想定よりも少なかった。また、APCの変異同定方法は当初予定したものを変更した。 しかし、「研究実績の概要」に記したように、大腸癌肝転移と周術期化学療法に関する新たな知見を得ており、今年度中に論文公表できる見込みである。よって、大腸癌肝転移に対し、本当に周術期化学療法が有用なのか、あるいは適用する条件は何か、というような、現在の課題に対するいくつかの解答は得られつつある。そういう意味ではおおむね順調に研究は進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」に記載した通り、「周術期化学療法による微小転移の制御」の可能性につき、一定の知見は得られており、これに関する検討をさらに進める予定である。 現時点で検体収拾数が少なめであるが、研究分担者である進藤が現在勤務している虎の門病院の症例も加えることでこれを補う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の使用状況とうまく合致できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は最終年度のため、分担者と密に連絡を取り、収支ゼロになるように留意する。
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