研究課題
本年度(平成28年度)も、平成27年初めに東京大学医学部附属病院倫理委員会で承認された研究計画をもとに、前向きな症例集積を行った。前年報告通り、東京大学における大腸癌肝転移の初発切除例が少ないため、共同研究者の進藤が所属する虎の門病院でも平成28年初めに倫理委員会の承認を得て症例集積を共同で行った。平成29年3月末現在、44症例における腫瘍組織・腫瘍周囲の正常肝実質の組合せを集積完了した。これについて病理学的微小転移の評価とDNAを抽出してKRAS・APCの遺伝子学的変異同定を行ったが、目標の100症例に達していないこともあり、十分な検出力を得るには至らなかった。今後も症例集積を継続し、報告する予定である。上記と並行して、当院における過去の大腸癌肝転移症例における肝切除症例を用いて、周術期化学療法と病理学的微小転移および術前CTにおける形態学的変化との関連についての後ろ向き検討を行い、論文発表を行った。(Ann Surg Oncol. 2017 Mar 27, Epub) 本論文では、周術期化学療法を行った上で手術を施行した症例で微小転移の頻度が有意に減少すること、周術期化学療法に分子標的薬を含んだ症例で微小転移の存在範囲が有意に狭まることを報告した。そして、微小転移の存在を術前に予測する方法として、腫瘍径変化と比較して術前CTにおける腫瘍の形態学的変化が優れていることを示した。あくまで後ろ向き検討であり、母集団の背景因子にバラツキがある、術前化学療法を行って切除に至ることのできた症例のみが選択されており切除に至らなかった症例との比較がない、などの問題点があり周術期化学療法を行うべきか否かという議論に決着をつけるものではない。しかし、上記前向きアプローチによる知見でも統計学的有意差を得るには至らないものの同じ傾向は認められており、今後の研究方向性を示唆する重要な報告である。
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Annals of Surgical Oncology
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10.1245/s10434-017-5845-z.