研究実績の概要 |
【背景】Indocyanine green(ICG)は胆道排泄される光感受性物質で、肝細胞癌では排泄が障害されICGが特異的に集積する。miceヒト肝癌細胞皮下移植モデルに対してICGを用いた光線力学療法(PDT)を検証した。 【方法】In vivo:ヒト肝癌細胞株HuH-7をBALB/c miceに皮下移植後ICGを静注した。ICG投与24h後に波長823nmの近赤外光 (NIR) を160mW, 3minの条件で照射した。NIR照射24h後に腫瘍を組織切片化し、酸化ストレスの有無を評価した。NIR照射後day3,6,9に腫瘍サイズを計測し、PDT効果を評価した。In vitro:HuH-7 cell培地を作成しICGの濃度を、0, 0.005, 0.05mg/mlと変化させNIRを照射しMTT assayを用いて細胞生存率を評価した。NIR照射は、保温、保冷シート上の2条件下で行った。 【結果】In vivo:ICG蛍光観察では移植されたHuH-7腫瘍に特異的に蛍光が確認された。ICG+NIR+ではICG+NIR-と比較して、有意に腫瘍増殖抑制効果が認められた。一方、HuH-7腫瘍のNIR照射部位は約50℃の温度上昇が認められた。またNIR照射後の腫瘍組織から酸化ストレスが検出され、TUNEL染色ではapoptosisが認められた。In vitro:ICG添加培地へのNIR照射により、ICGの濃度、NIR照射回数依存性に腫瘍細胞生存率の低下を認めた。NIR照射を保温上で行うと細胞死を認めるが、保冷上では細胞死は弱まった。 【結論】ヒト肝癌細胞に対するPDT(ICG-NIR)は、抗腫瘍効果が認められた。これは、熱産生と、酸化ストレス産生によるapoptosis誘導によって引き起こされていると考えられた。抗腫瘍効果は、NIR照射回数や、ICG濃度により高まると考えられた。
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