研究課題
本研究の最終的な目的は肝細胞機能不全の維持に個別に対応できる人工肝補助システムを開発することにある。そのなかでも、肝類洞壁細胞である肝Kupffer細胞が肝再生に重要であることをこれまで明らかにしてきた。今年度は肝再生そのものに関与する因子を明らかにすべく研究を展開した。(1)マウス肝切除モデルにおけるC-type lectin receptor-2 (CLEC-2)の肝再生への影響、また、(2)肝再生の究極のモデルとも考えられるdiethyl nitrosamine (DEN)誘発肝細胞癌マウスモデルにおけるinterleukin(IL)-17Aの関与、さらに(3)ヒト肝細胞癌症例において肝細胞癌の外科的切除後の再発へのmacrophage colony-stimulating factor (M-CSF)の関与を明らかにした。(1)CLEC-2のWildタイプマウス(WT)、ノックアウトマウス(KO)、血小板のみに反応しないキメラマウス(flKO)に70%肝切除を施行したところ、flKOにおいて肝切除後の再生が遅延していることが明らかになった。このことからCLEC-2が肝再生に重要な役割をもっていることが明らかになった。(2)IL-17A のWildタイプマウス(WT)、ノックアウトマウス(KO)にDENを投与し肝発癌を検討した結果、KOではWTに対して発癌率は低く、酸化ストレスによるDNAの損傷も軽度であることから、IL-17Aが炎症を通じてDNA損傷を生じ発癌に至り、かつ細胞増殖を加速させることが明らかになった。(3)M-CSF、M2 macrophages(MΦs)、vascular endothelial growth factor (VEGF)の関連を検討した。腫瘍周囲の肝実質にM-CSF、VEGF、 MΦsの発現が高いほど再発率が高かった。このことからMΦs由来の血管新生因子VEGFをM-CSFが活性化することにより肝癌再発の頻度が高まるものと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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