研究課題/領域番号 |
26462043
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
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研究分担者 |
永野 浩昭 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294050)
小林 省吾 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (30452436)
富丸 慶人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70528570)
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 血管新生 / エクソソーム / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
肝癌の浸潤・転移機構を解明するために,新たな細胞間の情報伝達物質である脂質二重膜で囲まれた30~100nmの膜小胞:エクソソームの働きについて検証した。まず,ヒト肝癌細胞株(HuH7, PLC/PRF/5, HepG2, HLE)を通常酸素下、低酸素下で培養し、各環境下における細胞増殖を比較したところ,低酸素下における肝癌細胞株の増殖能は、通常酸素下と比較して45.9~64.7%減少した。次に各肝癌細胞株を通常酸素下・低酸素下で24時間培養し、その培養上清からExoQuick-TCを用いてエクソソームを抽出し,Bradford法を用いて抽出したエクソソームの濃度を測定すると,細胞あたりのエクソソーム分泌量は低酸素下で増加していた。次に,抽出したエクソソームを50μg/mlに調整しそれぞれの肝癌細胞株に添加し,72時間培養後にエクソソーム無添加・通常酸素下エクソソーム添加・低酸素下エクソソーム添加の各群における肝癌細胞の増殖能をMTT法にて比較した。対照群と比較し、いずれの細胞株においてもエクソソーム添加することで,その増殖能が54.7~85.9%に抑制された。また,HuH7では添加するエクソソーム濃度を5μg/ml,25μg/ml,50μg/mlとすると、その増殖率はそれぞれ95.3±2.6%, 63.0±3.4%, 54.7±3.9%となり、添加するエクソソームの濃度が高いほど、増殖能が抑制された。肝細胞癌株からエクソソームを抽出し,これを同様の肝細胞癌株に添加することによって,その増殖能影響を及ぼすことを確認した。今後,エクソソームの癌細胞の浸潤能や足場非依存性増殖への影響,血管内皮細胞の増殖能,管腔形成能への影響を評価し,エクソソームに内包される標的分子の同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝癌細胞株からExoQuick-TCを用いて,エクソソームを抽出し,これが肝癌細胞の増殖に与える影響についての検証が行えているため,今後,血管内皮細胞への影響や,肝癌細胞の浸潤能に対する影響を検証する予定である
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今後の研究の推進方策 |
今後,肝癌細胞より分泌されるエクソソームの血管新生に対する働きを明らかにするために,肝癌細胞の培養上清より回収したエクソソームを,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に添加することにより,血管内皮細胞の増殖(MTT assay,Cell Count法),遊走能(Migration Assay),脈管形成能(Tube Formation assay)を評価する予定である。また,低酸素下で培養した肝癌細胞からの抽出したエクソソームは,血管新生促進作用が強いと考えられるため,低酸素培養下および通常培養下でのエクソソームを回収し,これを血管内皮細胞に添加することで,増殖能,遊走能,脈管形成能の評価を,肝癌細胞に添加することで増殖能,浸潤能の評価をする予定である。さらに,低酸素培養下および通常培養下で回収したエクソソームをマイクロRNAの網羅的発現解析を行うことで,血管新生能を有するマイクロRNAを同定し,治療標的となりうるかの検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
肝癌の浸潤・転移機構を解明するために,新たな細胞間の情報伝達物質である脂質二重膜で囲まれた30~100nmの膜小胞:エクソソームの働きについて検証する実験を行うための細胞等を購入し、実験に必要なものが揃ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究費については,実験試薬としてqRT-PCR,ExoQuick-TCの購入に加えて,マイクロRNAの網羅的発現解析や抗体などの購入使用する予定である。また,研究成果の一部を国内学会で発表する予定である。
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