研究課題
職業性胆管癌症例の臨床病理学的検討の結果、比較的若年、血清γ-GTP高値、癌による胆管狭窄を伴わない限局性肝内胆管拡張像、主腫瘍以外の広範囲の胆管に前癌病変や早期癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)やintraductal neoplasm of the bile duct(IPNB)がみられ、さらに慢性胆管傷害像やγ-H2AX陽性胆管上皮がみられることが明らかとなった。これらから、職業性胆管癌では、DNA傷害を伴う慢性胆管傷害が惹起され、前癌病変や早期癌病変を経て浸潤癌に至ると考えられた。職業性胆管癌切除例と通常型胆管癌との比較においても、上記の所見が職業性胆管癌の特徴であることが示された。外科治療例では術後合併症頻度が高く、多中心性再発がみられた。職業性胆管癌では腫瘍部だけでなく非腫瘍部においてもDNAメチル化を媒介するDNA methyltransferaseの発現が亢進しており、多段階過程においてDNAメチル化異常が蓄積し、エピジェネティックな発癌の素地が形成されていると考えられた。胆管周囲線維化の組織学的特徴として、胆管周囲にα-SMA陽性の紡錘形細胞を多く認めた。職業性胆管癌の癌部、前癌病変部および正常胆管DNAの遺伝子解析を行った結果、通常型胆管癌に比較し、癌部および前癌部病変における塩基置換数が多くみられた。したがって、職業性胆管癌は、化学物質などによるDNA損傷が発癌の原因であることが推測された。以上より、化学発癌の典型例である職業性胆管癌症例では、化学物質によりDNA傷害を伴う慢性胆管傷害が広範囲の胆管に惹起され、前癌病変や早期癌病変を経て浸潤癌に至る多段階発癌を来すとともに、それに関連した臨床検査値や画像所見、および多中心性発癌(再発)や術後合併症がみられることが特徴であると考えられた。
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