研究実績の概要 |
平成26年度において、リポポリサッカライド(Escherichia coli, 0111:B4)の160 µg/kgとD-ガラクトサミンの400 mg/kgの腹腔内投与後2時間において、肝臓組織抽出液中のキマーゼ活性およびキマーゼにより活性化されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9活性、炎症誘発因子として知られるTumor necrosis factor (TNF)-αが著明に増加し、24時間で著明な肝細胞壊死を示す劇症肝炎を発症することを示した。そして、平成27年度は。リポポリサッカライドとD-ガラクトサミン投与前1時間にキマーゼ阻害薬であるTY-51469の10 mg/kgと30 mg/kgを投与することで、濃度依存的にリポポリサッカライドとD-ガラクトサミン投与後24時間の血中のAST、ALTの値、肝臓組織中のマロンジアルデヒド濃度、肝臓壊死面積が減少することを示した。 平成28年度は、リポポリサッカライドとD-ガラクトサミンの投与後2時間においてキマーゼおよび炎症関連因子が著明に増加することより、その時点においてキマーゼ阻害薬であるTY-51469の10 mg/kgと30 mg/kgを投与し、リポポリサッカライドとD-ガラクトサミン投与後24時間に見られる劇症肝炎に対する影響を検討した。キマーゼ阻害薬は濃度依存的に肝臓のキマーゼ活性を抑制し、MMP-9活性およびTNF-αを濃度依存的に抑制した。また、肝臓のTNF-αやインターロイキン(IL)-1βの遺伝子発現もキマーゼ阻害薬により抑制され、好中球のマーカーであるミエロペルオキシダーゼの発現も有意に抑制された。血中のASTおよびALT、そして、MDAもキマーゼ阻害薬により濃度依存的に抑制された。そして、キマーゼ阻害薬は濃度依存的に肝臓壊死面積を抑制した。 これらのことより、キマーゼ阻害薬を劇症肝炎の発症後急性期に投与することで劇症肝炎の重症化を軽減できることが示唆された。
|