研究実績の概要 |
膵癌臨床検体におけるEphA4の発現状況と、予後や再発との関連を検討した。Tissue microarray法を用い、膵癌99例の臨床組織検体におけるEphA4蛋白の免疫染色と臨床情報を比較した。99例中46例(46.5%)にEphA4陽性例を認め、陽性例は陰性例と比較しOver all survivalで有意に予後不良であった(p=0.029)。またEphA4発現を含めた臨床病理学的因子の多変量解析では、EphA4発現陽性は独立した予後不良因子であった。特定の再発部位との関連は認めなかった。 EphA4の発現状況の異なる膵癌細胞株を用い、EphA4阻害剤4-(2,5-dimethyl-1H-pyrrol-1-yl) -2-hydroxybenzoic acid(以下、Compound 1と略記)による用量・時間依存性の増殖抑制効果を検証した。結果、Compound 1はEphA4高発現株において、用量・時間依存性の増殖抑制効果を発揮した。またヒト膵癌細胞株によるマウス同所移植モデルを用い、Compound 1投与による膵癌治療実験を施行し、抗腫瘍効果を確認した。 実臨床において、膵癌に対する既存の分子標的治療薬は単剤で効果がなく、化学療法との併用療法で承認されている。このためGemcitabineとCompound 1の併用療法を施行した。Gemcitabine単剤と比較し、Compound 1との併用療法は、in vitro、in vivoにおいていずれも高い抗腫瘍効果を発揮した。 副作用の観点から、Compound 1治療による心臓、肺、肝臓、腎臓といった生命維持に重要な臓器や、脳神経細胞に与える影響について、治療終了後の摘出臓器を観察したが、明らかな臓器障害を認めなかった。
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