研究課題
申請者らは、癌組織腫瘍先進部でしばしばみられる細胞間接着能を失って孤立した癌細胞塊Budding cancer cell(BUD)の示す分子細胞学的特徴に着目し、「BUDは、細胞増殖能をもち周囲への浸潤を来たす細胞と、TUNEL法で証明されるアポトーシスへ誘導される細胞とに区別され、前者が腫瘍進展および転移に強く関与しており、それが予後不良の原因である」という仮説をたて本研究を企画した。【目的】膵癌腫瘍先進部での細胞間接着能を失って孤立した癌細胞塊Budding cancer cell(BUD)の形質発現から腫瘍組織進展、転移に至る機序を解明することである。(1) BUDの組織学的構造:膵癌切除標本において簇出細胞を蛍光免疫組織染色(IF)で標識し、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて組織像を立体構築することで膵癌腫瘍先進部のBUD構造を視覚的に解明した。(2) 二重免疫組織染色によるBUD細胞での細胞増殖動態:二重免疫組織染色にて膵癌腫瘍先進部のBUDにおけるKi-67発現及びTUNEL法によるアポトーシス検出を確認し、アポトーシスとは区別されるBUDを同定した。膵癌腫瘍先進部において、BUD数が多く、かつKi-67陽性簇出を含む症例は有意に予後不良であった。(3) BUD細胞表面マーカーの検出:膵癌腫瘍先進部のBUDにおける細胞表面マーカーを検索すると、E-Cadherinは欠失せず、ビメンチン発現は見られなかった。BUDとE-Cadherin陰性細胞およびビメンチン陽性細胞との間に関連を示すことはできなかった。(4) 腫瘍組織進展、転移機序の解明:BUDでの細胞増殖能及びEMTという視点から、膵癌におけるBUDはその増殖活性の存在が予後と関連していたが、EMTに関連するとされる細胞表現マーカーとの間に統計学的有意差は示せず、予後不良となる機序は未解決のままであった。
すべて 2017
すべて 学会発表 (1件)