研究課題/領域番号 |
26462063
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤田 逸人 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40611281)
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研究分担者 |
前山 良 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10611668)
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507787)
真鍋 達也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60546464)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵癌 / 肝転移 / 線維芽細胞 / 間質リモデリング |
研究実績の概要 |
本研究は膵癌の肝転移形成において促進的に作用する特定の間質細胞集団およびその責任分子を同定して癌間質リモデリングによる新たな膵癌遠隔転移制御治療法を開発する事である。 まず我々は肝転移由来線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast at liver metastasis; CAF-LM)の樹立を行い、膵癌細胞との相互作用について原発巣由来線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast at primary tumor; CAF-PT)との比較を行った。CAF-LMの性質を検討したところCAF-PTと比較して有意に遊走能の低下を認めたが、膵癌細胞との共培養ではCAF-LMはCAF-PTと比較して有意に膵癌細胞の遊走能や浸潤能を亢進することを明らかにした。 次に肝転移巣において間質細胞を誘導・活性化する因子を検討するために高率に肝転移を生じる膵癌高肝転移株の樹立を行い、網羅的解析を行う事で肝転移能の低い膵癌細胞株と比較して発現変動の大きな遺伝子の同定を行った。膵癌高肝転移株はヒト膵癌細胞株をヌードマウスに同所移植してその肝転移巣を摘出し、この肝転移巣から癌細胞を樹立するという手技を5回繰り返すことで樹立した。膵癌高肝転移株では肝転移能の低い細胞株と比較してMAL2・DCLK1・GPR56・CEACAM6・LOXなどの発現が上昇していることが示された。MAL2は上皮細胞における表層への蛋白輸送と細胞極性の制御因子として知られており頭頸部癌や膵癌で転移に関わることが報告されている。GPR56やCEACAM6・LOXも細胞接着や細胞外器質の架橋形成により各種癌の転移を促進することが報告されている。 以上より肝転移形成には間質細胞の存在が重要であり、癌細胞と間質細胞の相互作用には前述した遺伝子が大きく関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝転移由来線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast at liver metastasis; CAF-LM)の性質を明らかにし、hPSCとの相違に関しても検討を行った。 また、膵癌高肝転移株を樹立して網羅的解析を行う事で肝転移に関わると考えられる複数の接着及びECM関連遺伝子を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌肝転移巣に存在する間質細胞の起源について検討を行う。具体的にはGFPを標識したhPSCsや肝転移由来線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast at liver metastasis; CAF-LM)を膵癌細胞株とともにマウス膵に同所共移植し、そこから転移した結節にGFPが発現しているのか検討する。これにより肝転移巣に存在する間質細胞がマウス由来のものか共移植したものかを解明する事ができると考えている。 さらに肝転移由来線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast at liver metastasis; CAF-LM)に特徴的な表面マーカーや液性因子などの検索や肝転移巣における癌間質相互作用に関わる遺伝子の検討を行い、新たな間質リモデリング治療の開発を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、実験用マウス、マウス作成費等
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