研究課題/領域番号 |
26462064
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鬼丸 学 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80529876)
|
研究分担者 |
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507787)
真鍋 達也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60546464)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 肝転移 / 癌幹細胞 / トロンボポエチン |
研究実績の概要 |
膵癌は難治性疾患であり、早期に局所浸潤や遠隔転移をきたすため、診断時には切除不能である症例が多く、その予後は不良である。本研究は、膵癌の肝転移において膵癌細胞が原発巣から血行性に肝臓へと到達した後にどのような選択機構が働くか、つまり、癌細胞が淘汰され、どのような癌細胞が生着するのかを明らかにし、膵癌の肝転移抑制、および新規治療法を開発することを目的とする。膵癌が肝転移を引き起こす要因として、膵癌細胞側の因子と肝臓側の因子が考えられる。どのような癌細胞が肝臓に到達し、肝臓によってセレクションを受け生き残るかを検討した。 まず、我々は、大腸癌において転移癌幹細胞(MCSCs: migrating cancer stem cells)として報告があるCD110に着目した。CD110は、トロンボポエチン受容体としても知られており、肝臓ではトロンボポエチンmRNA発現が高いことも判明しているため、これが肝転移において重要な役割を果たしていると推測した。CD110と肝転移に関する検討したところ、CD110をノックダウンした膵癌細胞株では対象群と比較し、遊走能や浸潤能が低下した。また、ノックダウン群と対象群では増殖能は変化しなかったが、トロンボポエチン投与下では、ノックダウン群で有意に増殖能が低下した。膵癌切除症例(n=59)において、CD110発現陽性群は陰性群よりも全生存期間と無病生存期間ともに有意に短かった。また、CD110発現陽性群がより早く肝転移巣を形成した。以上の結果から、肝臓に到達した癌細胞が生存するために、CD110が重要な役割を担っていることが示唆された。今後は、癌細胞の脾注によるマウス肝転移モデルを作製し、CD110発現と肝転移に相関が見られるかを検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝転移に関わる因子としてトロンボポエチンおよびCD110に着目し、肝転移に関与する基礎的な検討で概ね予想通りの結果が得られている。当研究室が保有する膵癌細胞株でのCD110発現の検討や、CD110の遺伝子抑制による遊走・浸潤・増殖といった癌細胞機能の変化を明らかにした。さらにヒト膵癌切除症例での検討においてCD110高発現群で、より早期に肝転移が形成された。また、現在、癌細胞の脾注もしくは同所移植によるマウス肝転移モデルを作製し、本テーマに対するさらなる検討を加えている段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト膵癌切除症例においてCD110の免疫組織化学染色を行い、CD110発現と肝転移の相関を解析する。また、in vivo実験として、CD110をノックダウンした膵癌細胞株と対象群のマウス脾注もしくは同所移植モデルを作製し、肝転移形成能を比較検討する。免疫組織化学染色等を用いてノックダウン群と対象群における転移巣周囲組織や癌細胞のタンパク発現を検討する。さらに、トロンボポエチン阻害剤を用いて、膵癌細胞株の肝転移が抑制されるかどうかを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進展しており、資金を効率的に使用できたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究用試薬、抗体、培養用試薬、器材、遺伝子改変マウス作製料
|