研究課題/領域番号 |
26462066
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
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研究分担者 |
前山 良 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10611668)
三浦 大典 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 准教授 (40532627)
真鍋 達也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60546464)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MALDI-MSI / Energy Charge / 凍結組織アレイ / バイオマーカー探索 |
研究実績の概要 |
膵癌組織由来サンプルは、他の癌腫と比較し採取できる量が少ないため、サンプルの有効利用の観点から、乳癌組織を用いてメタボロームマッピング解析を進めている。 99症例から採取した乳腺組織119サンプル(腫瘍84、正常35)を用いたメタボロームマッピングにおいて、1915個のピークを検出した。それらのうち、60%以上のサンプルで共通に検出され、高いシグナルを示す185ピークを解析対象として検討を行った。 それらのうち、対応する代謝物が推定できた物質は18で、その多くは、ATPなどエネルギー代謝に関するものであった。 組織中に含まれる腫瘍細胞の割合の影響を除外するために、シグナル抽出対象領域の細胞割合を画像処理によってもとめ、シグナル強度を補正したが、対象とした185ピークのうち、85%において、有意差の有無に変化は見られず、補正による影響は限定的であることが示唆された。 シグナルと凍結切片の対比で、MALDIにおいてUDP関連代謝産物であるUDP-GlcNACの腫瘍部での蓄積が認められたが、同部位において、抗o-GlcNAC免疫染色陽性であることから、検出されたシグナルに矛盾しない結果を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MALDIで得られた結果を組織情報、臨床情報との対比とすすめ、乳癌特有のホルモン感受性やHer-2との関係について検討を行ったが、Energy Charge(EC)およびATP+ADP+AMP総和量(AXP)の比較において、腫瘍vs正常組織間での比較でのみ有意差が認められたが、それ以外について有意差は認めなかった。 組織中の腫瘍細胞割合によるシグナル強度差を検証し、大きな影響が無いことが予想されたため、ここまでの結果をまとめて、学会発表を行い、現在論文執筆に取りくんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点の検討では新規のバイオマーカー候補となる代謝物は同定できなかったが、免疫染色等他の分析方法と組み合わせることにより、代謝物の推定に必要な情報が得られることが期待できる。 論文執筆に取り組むとともに、平行して、膵癌組織を用い解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規のバイオマーカー候補となる代謝物は同定できなかったため、研究計画に変更が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
膵組織のメタボロームマッピングの解析作業を行う。それに伴う試薬、標品の購入費がかかる。また、これまでに同定された代謝産物の関連分子を同定し、In situ Hybridization、免疫染色等による癌組織中の生物学的機能の変化を調べる。これらに伴う抗体などの費用がかかる。得られた知見は欧米雑誌に投稿もしくは国際学会にて発表予定であり、それに伴う経費も計上する。
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