研究課題
メタボローム解析はゲノムの物質的最終表現型である代謝物を対象とし、疾病マーカー探索等における重要性が指摘されている。組織サンプルを対象とした従来の質量分析法では、代謝物の抽出・濃縮が不可欠で、組織内局在情報が失われてしまう。そこで我々は凍結切片にレーザーを照射し分析を行うマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング(MALDI-MSI)を用いることで、メタボローム情報を組織像上にマッピングすることに成功した。さらに、当研究室で開発した凍結組織マイクロアレイブロックを用いることにより複数サンプルの分析を効率よく実施できた。この方法を用いて、切除標本由来膵癌サンプルを対象に早期診断・個別化治療確立の手がかりとなる代謝産物の同定を試みた。今年度までに、膵癌組織由来サンプルは、他の癌腫と比較し採取できる量が少ないため、サンプルの有効利用の観点から、乳癌組織を用いてメタボロームマッピング解析を進めてきた。99症例から採取した乳腺組織119サンプル(腫瘍84、正常35)を用いたメタボロームマッピングにおいて、1915個のピークを検出した。それらのうち、60%以上のサンプルで共通に検出され、高いシグナルを示す185ピークを解析対象として検討を行った。それらのうち、これまでに対応する代謝物が推定できた物質は18で、その多くは、ATPなどエネルギー代謝に関するものであった。これまでに行った、組織中に含まれる腫瘍細胞の割合の影響に関する検討および、腫瘍、正常部位のEnergy Charge(EC)およびATP+ADP+AMP総和量(AXP)の比較、リンパ節転移有無および組織型、腫瘍径との関連について、まとめ、英文雑誌に論文投稿中である。また、膵癌、膵炎、正常膵組織を用いたメタボロームマッピングを行い、解析を進めているところである。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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