研究課題/領域番号 |
26462070
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
遠藤 格 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211091)
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研究分担者 |
廣島 幸彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60718021)
森 隆太郎 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90596412)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵癌 / マウスモデル / 膵炎 / Kras / CRMP4 / リン酸化 / CDK5 / GSK3β |
研究実績の概要 |
【CRMP4の高発現、低発現の膵癌細胞株を用いたCRMP4リン酸化の意義の検証】 CRMP4-EGFPをCRMP4低発現株であるPanc1に導入し、安定発現株(Panc1-CRMP4-EGFP)を樹立し、浸潤能、転移能を比較検討する。申請者らは既にCRMP4の安定発現株の樹立に成功し、CRMP4の安定発現株で有意にFilopodia(糸状仮足;細胞の浸潤に不可欠)の形成を認めた。次にこのPanc1-CRMP4-EGFPにCRMP4のリン酸化酵素阻害薬であるCDK5阻害薬とGSK3β阻害薬を投与し、Filopodia形成の変化を観察した。その結果、CDK5阻害薬の添加ではFilopodia形成に変化を認めなかったが、GSK3β阻害薬を添加すると有意にPanc1-CRMP4-EGFPのFilopodia形成が減少した(未発表データ)。以上から、膵癌においてCRMP4がGSK3βによりリン酸化され、浸潤(Filopodia)能を促進している事が示唆された。 【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデルの作成】 KrasG12Dマウスを入手し、CRMP4ノックアウトマウスとの交配、飼育を行っており、今年度中にCRMP4ノックアウト膵癌マウスを作製できる見込みである。また、慢性膵炎は膵癌発症のリスクが13倍以上になることが報告されており、膵癌発癌の強いリスク因子と考えられ、我々はマウスの急性膵炎モデル、慢性膵炎モデルにおいて主に間質に浸潤したT細胞と一部腺房細胞の細胞質にCRMP4が発現しており、かつリン酸化されていることを解明した(Plos One投稿中)。T細胞にCRMP4が発現していることからCRMP4は免疫系にも関わっていることが示唆され、膵癌浸潤能のみならず別の側面で膵癌進展に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、CRMP4の安定発現株の樹立し、CRMP4の安定発現株で有意にFilopodia(糸状仮足;細胞の浸潤に不可欠)の形成を認めた。さらに、Panc1-CRMP4-EGFPにCRMP4のリン酸化酵素阻害薬であるCDK5阻害薬とGSK3β阻害薬を投与し、Filopodia形成の変化を観察した。その結果、CDK5阻害薬の添加ではFilopodia形成に変化を認めなかったが、GSK3β阻害薬を添加すると有意にPanc1-CRMP4-EGFPのFilopodia形成が減少した(未発表データ)。以上から、膵癌においてCRMP4がGSK3βによりリン酸化され、浸潤(Filopodia)能を促進している事が示唆された。 また、【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデルの作成】においては、申請者らはすでにKrasG12Dマウスを入手し、CRMP4ノックアウトマウスとの交配、飼育を行っており、今年度中にCRMP4ノックアウト膵癌マウスを作製できる見込みである。さらにこの発癌モデルを作成する過程で、マウスの急性膵炎モデル、慢性膵炎モデルにおいて主に間質に浸潤したT細胞と一部腺房細胞の細胞質にCRMP4が発現しており、かつリン酸化されていることを解明した(Plos One投稿中)。T細胞にCRMP4が発現していることからCRMP4は免疫系にも関わっていることが示唆され、膵癌浸潤能のみならず別の側面で膵癌進展に関与していると考えられた。以上のことから、概ね順調に研究は進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【CRMP4の高発現、低発現の膵癌細胞株を用いたCRMP4リン酸化の意義の検証】 前述したように、申請者らはPanc1-CRMP4-EGFPにCRMP4のリン酸化酵素阻害薬であるCDK5阻害薬とGSK3β阻害薬を投与し、Filopodia形成の変化を観察し、CDK5阻害薬の添加ではFilopodia形成に変化を認めなかったが、GSK3β阻害薬を添加すると有意にPanc1-CRMP4-EGFPのFilopodia形成が減少することを発見した。今後は、in vitro(invasion assay), ex vivo(3D神経浸潤モデル), in vivo(同所移植モデル)でのGSK3β阻害薬を含む各種リン酸化酵素阻害薬の効果を浸潤能、転移能において評価する。 【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデル実験系】 KrasG12Dマウスを入手し、CRMP4ノックアウトマウスとの交配、飼育を行っており今年度中にCRMP4ノックアウト膵癌マウスを作製できる見込みであるので、今後は通常膵癌マウスと生存期間、腫瘍径、遠隔転移、神経浸潤を比較検討しCRMP4の膵癌進展における役割を詳細に解析する。また、各種臓器を摘出しCDK5、Sema3A、GSK3βなどの他の蛋白との関連性を免疫染色、Western Blotting、RT-PCRにより解明して行く。また、上記細胞実験で効果の認められた阻害薬を両モデルマウスに投与し、その膵癌進展における効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデルの作成する過程で、マウスの急性膵炎モデル、慢性膵炎モデルにおいて主に間質に浸潤したT細胞と一部腺房細胞の細胞質にCRMP4が発現しており、かつリン酸化されていることを発見し、この機序の解明に時間を費やしたため、予定していたin vitro(invasion assay), ex vivo(3D神経浸潤モデル), in vivo(同所移植モデル)での実験が一部施行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
in vitro(invasion assay), ex vivo(3D神経浸潤モデル), in vivo(同所移植モデル)でのGSK3β阻害薬を含む各種リン酸化酵素阻害薬の効果を浸潤能、転移能において評価する。また、CRMP4ノックアウト膵癌マウスを完成させ、通常膵癌マウスと生存期間、腫瘍径、遠隔転移、神経浸潤を比較検討しCRMP4の膵癌進展における役割を詳細に解析する。
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