研究課題
【CRMP4の高発現、低発現の膵癌細胞株を用いたCRMP4リン酸化の意義の検証】(1)CRMP4安定発現株の樹立:CRMP4-EGFPをCRMP4低発現株であるPanc1に導入し、安定発現株を樹立し、浸潤能、転移能を比較検討する。本年度までに申請者らはPanc1-CRMP4-EGFPの安定発現株の樹立に成功した。また、コントロールとして、Panc1-EGFPの安定発現株を樹立し、浸潤能を比較検討した結果、Panc1-CRMP4-EGFPにおいて、有意にフィロポディア(糸状仮足;細胞の浸潤に不可欠)形成と浸潤能の増加を認めた(未発表データ)。今後は本細胞株を用い、CRMP4リン酸化酵素、阻害薬の効果の検証を行っていく予定である。【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデルの作成】KrasG12Dマウスを入手し、CRMP4ノックアウトマウスとの交配、飼育を行っており、少数匹ではあるがCRMP4ノックアウトマウス(Kras/Pdx-Cre/Crmp4-/-)の獲得に成功した。また、慢性膵炎は膵癌発症のリスクが13倍以上になることが報告されており、膵癌発癌の強いリスク因子と考えられ、我々はマウスの急性膵炎モデル、慢性膵炎モデルにおいて主に間質に浸潤したT細胞と一部腺房細胞の細胞質にCRMP4が発現しており、かつリン酸化されていることを解明した(投稿中)。T細胞にCRMP4が発現していることからCRMP4は免疫系にも関わっていることが示唆された。さらに、KrasG12D/Pdx-Creマウスの慢性膵炎モデルにおいて前癌病変を確認した。現在Kras/Pdx-Cre/Crmp4-/-の慢性膵炎モデルの前癌病変と比較し、異形成の程度、病変の進展範囲の比較解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデルの作成】においては、申請者らは少数匹ではあるがCRMP4ノックアウトマウス(Kras/Pdx-Cre/Crmp4-/-)の獲得に成功した。さらにこの発癌モデルを作成する過程で、マウスの急性膵炎モデル、慢性膵炎モデルにおいて主に間質に浸潤したT細胞と一部腺房細胞の細胞質にCRMP4が発現しており、かつリン酸化されていることを解明した(投稿中)。また、KrasG12D/Pdx-Creマウスの慢性膵炎モデルにおいて前癌病変を確認した。現在Kras/Pdx-Cre/Crmp4-/-の慢性膵炎モデルの前癌病変と比較し、異形成の程度、病変の進展範囲の比較解析を行っている。以上のことから、概ね順調に研究は進んでいると判断した。
【CRMP4の高発現、低発現の膵癌細胞株を用いたCRMP4リン酸化の意義の検証】前述したように、申請者らはPanc1-CRMP4-EGFPにCRMP4のリン酸化酵素阻害薬であるCDK5阻害薬とGSK3β阻害薬を投与し、Filopodia形成の変化を観察し、CDK5阻害薬の添加ではFilopodia形成に変化を認めなかったが、GSK3β阻害薬を添加すると有意にPanc1-CRMP4-EGFPのFilopodia形成が減少することを発見した。今後は、in vitro(invasion assay), ex vivo(3D神経浸潤モデル), in vivo(同所移植モデル)でのGSK3β阻害薬を含む各種リン酸化酵素阻害薬の効果を浸潤能、転移能において評価する。【CRMP4ノックアウトマウスを用いた膵癌自然発癌モデル実験系】現在前癌病変(Pancreas intraepithelial neoplasia)までの発生にとどまっているので、引き続き、観察期間の延長あるいは、炎症の惹起を行い、膵癌発生を観察していく。膵癌発生マウスを獲得した場合には、生存期間、腫瘍径、遠隔転移、神経浸潤を比較検討しCRMP4の膵癌進展における役割を詳細に解析する。また各臓器を摘出しCDK5、Sema3A、GSK3βなどの他の蛋白質との関連性を免疫組織化学的に解明していく。また細胞実験系で得られた阻害剤を両モデルマウスに投与し、その膵癌進展における効果を検証する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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