研究課題/領域番号 |
26462074
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
砂村 眞琴 東京医科大学, 医学部, 兼任教授 (10201584)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, その他の研究科, 准教授 (30458963)
堀井 明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40249983)
加藤 和則 東洋大学, 理工学部, 教授 (60233780)
糸井 隆夫 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60338796)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / 唾液 / 膵癌 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
唾液を用いたメタボローム解析により膵癌に特有な代謝物質のパターンを見いだした。これまでの研究では進行膵癌症例での検討であったが早期の膵癌に対する感度が不十分であった。このため質量分析装置によるメタボローム解析のSOPを改善することにした。その結果Stage 1の膵癌症例においてもマーカーとなる代謝物質が上昇することが確認できた。 感度の研究は一定の成果を上げているが、特異度に関しての検討を行う必要がある。大泉中央クリニックとの共同研究を企画し、上部内視鏡検査を受診するボランティア1000例を対象に唾液メタボローム解析を同時に施行した。既に約800例の検査が終了しているが、内視鏡検査所見とともに唾液中の代謝物質の測定データが得られている。この中に膵癌症例2例が含まれていたが、いずれもマーカーとなる代謝物質の値は上昇していた。また、膵癌などの心配が無い健常者の多くはマーカー物質の上昇は見られなかった。 早期胃癌症例は5例発見されたがいずれも唾液中の細胞増殖に関わる代謝物質の増加が確認されていた。現在臨床で使用されているCEAなどの胃癌に対する腫瘍マーカー値の上昇が認められない場合にも代謝物質の増加が確認できた。ピロリ菌感染症で代謝径路が修飾されることが報告されているが、胃癌では膵癌とは異なる代謝物質のパターンが示された。唾液メタボローム解析により早期胃癌の診断の可能性が示されるとともに、ピロリ菌感染による慢性胃炎の進行程度も予想できる可能性がある。今後臨床データや内視鏡所見とメタボローム解析データの関連性を検討していく。唾液検査により胃病変のハイリスク群を抽出し、上部内視鏡検査を必要とする患者群の分離が出来るようなアルゴリズムを作製したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌のみならず胃癌においても唾液メタボローム解析が有用な検査になることが示された。胃癌でのメタボローム解析の検討はこれまで報告例がなく画期的な成果である。また、膵癌におけるマーカーとなる複数の代謝物質パターンと胃癌でのパターンは異なっており、同じ癌でありながら胃癌ではピロリ菌感染の影響が代謝物質に変化を与えている可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
microRNAの分離に対して今後研究を進めていきたい。膵癌や胆道癌患者の唾液のみならず胆汁採取を行い、microRNAの分離が可能か検討を進めていく。 また、今回の臨床研究では膵癌や乳癌・大腸癌などに加え、胃癌においても唾液メタボローム解析が有用であることが示唆された。ピロリ菌感染症や慢性萎縮性胃炎などに対する唾液による診断の可能性についても検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析装置を用いた唾液メタボローム解析を行うための経費は共同研究者が獲得した経費である程度まかなうことが出来たため使用額を圧縮することが可能となった。 microRNA測定に関する試薬購入などを予定していたが、これまでの研究を代謝物質測定を中心に進めたため使用額が予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
唾液や胆汁のサンプルを収集しており、これらを用いてmicroRNAの測定を進める予定であり、試薬購入にこれまでの予算を使用する予定である。
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