研究課題/領域番号 |
26462074
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
砂村 眞琴 東京医科大学, 医学部, 兼任教授 (10201584)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (30458963)
堀井 明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40249983)
加藤 和則 東洋大学, 理工学部, 教授 (60233780)
糸井 隆夫 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (60338796)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | microRNA / メタボローム解析 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
抗癌剤感受性や獲得耐性に関わるメカニズムの研究を進めてきた。薬剤耐性獲得機序の解明のため、薬剤耐性株を樹立し、taxane耐性(食道癌)、gemcitabine(以下GEMと略記)耐性(胃癌、胆嚢癌、膵癌、大腸癌、胆管癌)、cisplatin耐性(頭頚部癌)の解析を行った。これらの結果から、taxane耐性ではABCトランスポーターであるABCB1の高発現が重要であること、GEM耐性では細胞内でGEMを活性化するDCKの機能喪失が重要であること、cisplatin耐性では機序は明確ではないが、miR-34aの発現レベルが治療応答性の有用なマーカーとなることなどを明らかにした。 親株および薬剤耐性株から細胞倍液中からエクソソームの分離とmicroRNAの抽出を試みている。また両細胞株のメタボローム解析を行っている。 膵癌(PC: n=42)と健常者(C: n=57)の唾液の代謝プロファイルを比較検討した。同時に東京医科大学健診センター受診者(H: n=649)の唾液サンプルと比較した。同定されたポリアミン類から3種類のアセチルスペルミジンをバイオマーカーとして多変量解析した。0から1までの値で罹患リスクを数値化した。Hの中央値0.084、Cの中央値0.246に対してPCの中央値は各ステージでStageⅠ(n=3):0.904、StageⅡ(n=2):0.6025、StageⅢ(n=9):0.999、StageⅣa(n=6):0.9985、StageⅣb(n=3):0.992、不明(n=19):0.988となり有意差を認めた。ポリアミン類をバイオマーカーとしてStageⅠの膵癌診断が可能であることが示された。パイロット的な検討でIPMNに対する解析も進めているが、IPMAではポリアミンの上昇が見られないのに対してIPMCで膵癌と同様に上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要な薬剤耐性株を樹立できたため、今後のプロジェクトを進める基盤は完成している。エクソソームの分離自体も試薬が手に入るため検討を進めているところである。また、食道癌などではmicroRNAの解析も進めており、薬剤耐性に関わるmicroRNAが同定できた。 また、唾液を用いた癌診断ではメタボローム解析の技術改良によりStage 1の膵癌も検出可能なことが示されている。ポリアミン類のうちスペルミンやスペルミジンのアセチル化した代謝物がバイオマーカーとして有用であることが判明している。 大腸癌においてもStage 0の段階でメタボローム解析により同定が可能なことが判明し、今後は腺腫の段階での診断可能性を検討する。 唾液中からもエクソソームが分離可能かについての検討が今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
唾液による癌診断は、膵癌・大腸癌において早期診断可能なことが示されている。今後は早期の癌症例を集積し検討を進めていく。併せてハイリスクグループを囲い込み、発癌時期の同定が可能かを前向き研究していく。 乳癌・肺癌なども同様な研究が進んでいるが、新たに胃癌の研究も進めていく予定である。 薬剤耐性株の樹立と薬剤体積機序とmicroRNAの薬剤耐性への関与を明らかにしている。今後は細胞株を用いた実験からエクソソームの分離を進めていく。分離したエクソソームから薬剤耐性に関与するmicroRNAの分離が可能かが大きな関心となる。この基礎研究から唾液を用いたエクソソームならびにmicroRNA分離を行っていき将来の癌診断の可能性を拡げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソソーム分離の研究が遅れているため引き続き研究を進めていく必要があり、試薬などの購入費用が必要である。 また、研究成果を国際学会などで発表する予定がある。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬などの購入。 国際学会などでの発表。
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