研究実績の概要 |
ヒトインバリアントNKT(iNKT)細胞にリプログラミングファクター(Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc)を導入して人工多能性幹細胞(iPSC)を樹立した。ヒトiNKT細胞には、CD4+CD8-(CD4+)とCD4-CD8-(DN)の2つの代表的なサブセットが存在するが、CD4サブセットから効率良くiPSCが作製できた。従来の方法により、NKT-iPSCからT細胞への再分化を試みたが、得られたT細胞はTCR刺激に対して低反応性の不良なものであった。分化の最終段階でIL-2とIL-15を組み合わせて添加したところ、CD1d拘束性にα-GalCerを認識して高度のT細胞応答を示すT細胞様の細胞を得ることができた。再分化したiNKT細胞(iPSC-iNKT細胞)は、T細胞受容体刺激あり・なしの両方において、元のiNKT細胞と類似の遺伝子発現パターンを示したが、特にTh1サイトカインであるIFN-γの産生が高く、Th2サイトカインであるIL-4の産生が低い傾向を示した。また、iPSC-iNKT細胞はα-GalCer負荷樹状細胞(DC)の成熟と活性化を誘導し、これを介して、がん抗原ペプチド特異的CD8陽性T細胞のプライミングを促進した。一方、このiPSC-iNKT細胞はNKG2DおよびDNAM-1を介して、in vitroで白血病細胞株(K562)を傷害した。以上より、再生iNKT細胞は、強力なNK活性によって抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなり、MICA/B, ULBP1-4, PVR, Nectin-2を発現する膵癌を排除する細胞製剤としての有用性が示唆された。
|