研究課題/領域番号 |
26462081
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
徳永 千穂 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (30451701)
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研究分担者 |
酒井 俊 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282362)
坂本 裕昭 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30611115)
兵藤 一行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60201729)
宮内 卓 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60222329)
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70359579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 高感度放射光微小血管造影 / シアーストレス |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、原発性ないし種々の疾患に伴って肺動脈圧が上昇する肺血管疾患である。増加したshear stressが肺血管抵抗の増加を引き起こすことによって肺最小動脈のび慢性狭窄・閉塞を認めるが、そのメカニズムとしてshear stressによる血管内皮細胞障害の関与が考えられている。本研究は高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設における放射光由来X線源と高感度HARP受像管(NHK放送技術研究所提供)を用いた高感度放射光微小血管撮影法を用いて、肺動脈におけるshear stressの評価と血管リモデリングおよび血管内皮細胞障害の機序を解明すること目的としている。 まず、炎症性肺高血圧モデルであるモノクロタリン誘導肺高血圧ラットモデルを用いて、高感度放射光微小肺血管撮影法を行い、モノクロタリン誘導肺高血圧ラットにおける微小肺動脈の狭小化を可視化することに成功した。撮影画像内の肺細動脈内径は有意に低下していた。さらに、心エコーで肺動脈内血流速度を測定したところ、モノクロタリン肺高血圧ラットの肺動脈流速は、コントロールに比して有意に低下しており、肺血管抵抗の上昇を反映していると考えられた。また、病理学的に微小肺血管の形態変化分析を行い、肺細動脈の血管壁はモノクロタリン誘導肺高血圧ラットにおいて有意に肥厚しており、高感度放射光微小肺血管撮影法による血管リモデリングの可視化が、病理学的所見と合致することを証明した。 これらは高感度放射光微小血管撮影法による肺動脈リモデリング評価の信頼性を高め、さらには心エコーで得られる中枢の流速よりも、より末梢における流速の変化を感知できる可能性を示唆しているものと考えられた。そして、この方法を応用することにより、異なる病態生理をもつ肺高血圧症において、肺血管リモデリングの進行を定量化することが可能になるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギー加速器研究所における放射光由来X線源と高感度HARP受像管、ハイビジョンシステムを用いた高感度放射光微小血管撮影を行っている。しかしながら高エネルギー研究所の使用は限られており常時行うことができないため、放射光実験と並行して病理学的解析やウエスタンブロッテングによる血管内皮細胞シグナリングに関する研究も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、血中及び肺組織におけるエンドセリン-1や血管内皮細胞増殖因子、さらにはエンドセリン受容体の発現を調べることにより、肺高血圧症における血管内皮細胞障害と血管リモデリングの相互関係を解明するべく研究を進める予定である。また、画像の時間的解像能の改善が、より微小な血管の撮影と造影剤濃度の変化による流量解析に必要であると考えられ、さらには新たなコンピュータ解析ソフトの開発を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
撮影した画像から、肺動脈における微小血管径や造影剤の分布を解析するための 流量解析ソフトを購入する予定であるが、既存のものでは生体内での微小な血管内のコントラストの変化に追従できないため、新たなコンピュータ解析ソフトの開発を進めており、その資金を来年度に繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
使用可能な流速解析ソフトの開発が出来次第使用する予定である。
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