本研究は「自己組織で内皮化された人工血管,再生小口径動脈の臨床応用」を最終目的に,吸収性ポリマーと人工血管(ePTFE)を組み合わせ,自己細胞とバイオリアクターを用いて完全内皮化された再生細小動脈グラフトおよび静脈グラフトの作成を目的としている.内皮化された人工血管は,感染性,抗凝固療法血管開存の点で人工血管に比して理想的であり,人工血管としての耐久性も期待できる.自己骨髄細胞および吸収性ポリマーを共培養した重合体を生体移植することで心臓大静脈の再生が臨床応用されているが,同方法を用いてバイオリアクター内で生体移植可能な再生血管グラフト作成を行い,生体移植後の機能組織学的な経時的評価を行う. ポリマー重合体人工血管に培養細胞を播種し培養を行った.培養の手法は段階的にシャーレ内で細胞播種後の培養,細胞固着後のバイオリアクター内での流体,圧加後の培養細胞増殖を行うことが可能であった.バイオリアクターは市販品がなく,気密性,滅菌の問題のためcontamination(細菌混入)を生じた.Contaminationを生じた培養体は本来の細胞は培養継続することはできず,細胞の混入防止方法を試みながらの再培養となった.人工血管と生体吸収性ポリマー重合体では両者の密着性では,ポリマーと人工血管の解離が生じる傾向があり,人工血管の内皮化の寄与に至らなかった.またポリマーの菲薄化の点で至適な厚さの再現が小口径人工血管には必要であった.目的としていた3.0から3.5mmePTFEグラフトでは内腔の保持が困難で,結果的に5mmの人工血管で内腔を確保することが可能であり,現状の内皮化人工血管は5mm程度が限界であった.
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