研究課題
本研究は細胞シートの凍結保存技術を開発して、細胞シート移植の汎用性を飛躍的に向上させることも目的としている。平成26年度、27年度では薬事承認を受けた骨格筋芽細胞シートのガラス化凍結保存法の開発を進め、in vitro評価にてその有用性を確認した。平成28年度においては3ヶ月間凍結保存した細胞シートと凍結前の細胞シートをそれぞれ心筋梗塞モデルのヌードラットに移植し、心機能改善効果を検証した。その結果、ヌードラットの移植前後の左室駆出率は凍結した細胞シート移植群では40±2%⇒54±4%に対し、凍結前の細胞シート移植群では41±2%⇒50±5%となり、両群間の心機能改善効果に有意な差はなかった。以上より、ガラス化凍結された骨格筋芽細胞シートはシートの形態や機能の維持および心機能改善効果が認められ、細胞シート治療の汎用性を向上する可能性が示唆された。さらにiPS細胞由来心筋細胞シートの臨床応用を目的とした分化誘導細胞の凍結保存方法の開発についても検討した。分化誘導した心筋細胞をGMPグレートの凍結保存液STEMCELLBANKER(R)で懸濁し、緩慢凍結保存した。心筋梗塞モデルのヌードラットに凍結保存していない心筋細胞(非凍結群:n = 6)と凍結した心筋細胞でそれぞれ調製した細胞シート(凍結群:n = 7)を移植し、sham群(n = 7)と移植後の心機能を比較した。移植4週間後、ヌードラットの左室駆出率はsham群(39±1%)と比較して、非凍結群(51±3%)及び凍結群(51±5%)で有意に高く(p<0.01)、非凍結群と凍結群では有意な差は見られなかった。以上より、本凍結保存技術により、ヒトiPS細胞由来心筋細胞が長期保存や輸送が可能となることから、臨床応用に向けた有効な凍結保存法であることが示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Heart Lung Transplant
巻: 36(2) ページ: 237-239
10.1016/j.healun.2016.11.012.