研究課題/領域番号 |
26462094
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
小澤 英樹 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20277156)
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研究分担者 |
根本 慎太郎 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20237811)
中澤 靖元 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20456255)
星賀 正明 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90309154)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / 外科治療 / 手術材料 / パッチ |
研究実績の概要 |
平成27年度まで用いたビーグル犬低圧系下大静脈から実臨床でのニーズを考慮した高圧系の大動脈へとパッチ埋植モデルを変更するため、左側開胸下に下行大動脈壁の一部を切除し、開発品パッチで補填する方法を考案した。吻合時に必要となる大動脈遮断によって生じる合併症である下肢対麻痺を予防するための一時的バイパス回路の設置と確立に時間を要した。 平成27年度で問題であったシルクフィブロインに配合するポリエチレカーボネートを変更すべく、生体内での炎症惹起が少なく、かつ既に医療材料として実績のある熱可塑性ポリウレタン(ペレセン)を選定し、引き続きエレクトロスピニング法でパッチ用シート材を作成した。得られたパッチの物性(破断強度と粘弾性)は既存製品(ePTFE製品、グルタールアルデヒドウシ心膜と同等であり、特筆すべきはePTFE製品で問題となる縫合糸による針穴出血はシルクフィブロイン・ペレセン配合パッチでは殆ど無かった。埋植3~6か月後のパッチ埋植部位の観察(摘出標本)では、肉眼的に狭窄や瘤化はなく血管内腔面には自己大動脈壁と連続する平滑な内膜組織が形成されていた。組織学的には、パッチ内外側に平滑筋細胞と膠原繊維が層状に配列し、内膜は内皮細胞で被覆されるという組織修復所見が得られた。またパッチ周囲の炎症性細胞集積はごく軽度にとどまり良好な生体適合性を示した。またパッチを構成する線維は構造を維持しており、石灰化もなく安定していた。一方で生分解性を示唆する崩壊や吸収像を認めなかった。 本研究の研究期間内では、シルクフィブロイン・ペレセン配合パッチの生体内埋植後長期における観察が終了できなかった。このため「パッチ線維の吸収と自己組織への置換」、そして「組織再生を通した成長(周囲組織の成長を妨げない)」の性能を証明する課題については今後のフォローアップ研究に託したい。(779字)
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