研究課題/領域番号 |
26462099
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
斎藤 綾 東邦大学, 医学部, 准教授 (10431868)
|
研究分担者 |
本村 昇 東邦大学, 医学部, 教授 (40332580)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メマンチン / 脊髄虚血 |
研究実績の概要 |
本研究では、胸部及び胸腹部下行大動脈手術後の重篤な合併症として脊髄虚血による対麻痺の薬剤投与による予防策について動物実験により検討することを目的としている。使用薬剤としてはNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗薬であるメマンチンを前投与しウサギ脊髄虚血モデル(腹部大動脈単純遮断)を用いて脊髄保護効果を検証することを行った。予備実験(コントロール n=5)としてウサギ脊髄虚血モデルにおける血行動態の変化について、上腕動脈及び右腎動脈の動脈圧及び中心静脈圧、脈拍数、心拍出量、血管弾性をモニターし循環動態の観測を行った。輸液管理を十分に行った上で動脈遮断中には上腕動脈血圧上昇が、遮断解除には急峻な血圧低下が確認できた。本実験では、当初はメマンチンの経口投与による効果を観測することを目標としていたが経口摂取量が不安定であったため投与方法を変更した。即ち、メマンチンの錠剤を粉砕し生食に溶解し(180mg/NS)osmotic pump(alzet OSMOTIC PUMP MODEL2ML1, DURECT Corp., CA, USA)に納め、ケタミン+キシラジン投与下にウサギ背部皮下に植え込みを行った(n=3)。Osmotic pumpは内容液を7日間で溶出する型を用いた。1週間後に腹部大動脈遮断による脊髄虚血実験を施行。コントロールと同様に操作前後の血圧、脈拍数、心拍出量、血管弾性を計測した。計測後はペントバルビタール+KCl投与による犠牲死とし、採血及び脊髄組織摘出を行った。また背部に植え込みしたosmotic pumpも回収し溶液の溶出状況を肉眼的に確認した。血液検体は血清分離の上-20度下で冷凍保存した。脊髄組織は10%ホルマリン固定の上プレパラート作成を行った(HE染色)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年は研究代表者及び分担者の勤務先移動に伴い実験環境整備に時間を要した。平成26年12月より動物実験を稼動し始め、手術手技や周辺機器の運用が安定するまである一定期間を要した。平成27年度には予備実験から開始した。まずコントロールデータの収集より開始し、更に本格的に課題実験に着手し急性期実験として血行動態変化に関するデータ及び脊髄虚血の器質的変化を確認するための検体を収集することが出来た。血管弾性については全体としては約半年ほどの遅れを生じている状態と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
実験で収集した検体の解析について平成28年度に行い結果の評価と学術集会での発表などを計画する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者及び研究分担者の勤務先異動に伴い実験の実施に遅延が生じたことにより、実験にかかる支出の状況にも同様に遅れが生じていることが考えられる。具体的には、動物実験によるデータ及び検体の収集はほぼ終了したが、コントロール群のデータ・検体収集については追加実験が必要である。また、検体検査及び病理標本の特殊染色が終了していない状態である。本来平成27年度に検査を提出している予定であったが諸費用は次年度支出に繰り越す必要が生じた。また、検体及びデータ分析を行った後の論文作成費用(英文校正など)、学会発表のための出張費用についても次年度に繰り越す必要が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
凍結保存中の血清はメマンチン濃度その他一般生化学検査に提出、病理検体についてはHE染色の結果を踏まえ特殊染色を追加(アポトーシス有無など)、論文作成、及び学会発表への費用として運用する予定である。
|