胸腹部下行大動脈手術後の重篤な合併症である脊髄虚血・対麻痺の薬剤予防投与の可能性についてウサギ脊髄虚血モデル(腹部大動脈遮断による虚血誘導)を用いて検討した。薬剤はNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンを採用した。投与経路はる経口投与を計画したがより安定していると考えられる皮下投与へ変更した(180mg/7日間)。脊髄虚血中の血行動態(血圧・脈拍、動脈硬化、心拍出量)に対するメマンチン前投与の影響は認めなかった。手術終了後の脊髄組織病理所見(HE染色)でも特記すべき所見は認めなかった。以上より、メマンチン前投与が脊髄虚血中に循環動態及び脊髄の質的変化を与える影響は最小限である可能性が予想された。
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