研究課題
胸部大動脈瘤および腹部大動脈瘤のシミュレーションを、破裂リスクの検討という形でおこなってきた。実際破裂症例の術前症例はほぼないため、瘤の拡張速度をリスクと認識する。工学部において医療画像から壁応力の算出を行い破裂部位の想定をおこなってきた。また医学部から臨床データの刷り合わせをおこなった。以前嚢状瘤の定義を試み発表した(Akai T, et al)が、このモデルに実臨床の瘤を当てはめ、この定義の妥当性を確立しつつある。成果の具体的の一つを示す。我々は、瘤頚部の曲率半径であるフィレット径と正常大動脈に接する楕円で構成したAAAの仮想モデルに対し、有限要素法を用いた構造解析を行い、最大主応力が高値となる条件を発見した。逆にこれらのパラメータが破裂例と非破裂例とで差異がみられるか検証した。本院および協力病院より収集した破裂および非破裂AAAのCT画像を医用画像処理ソフトTerareconにて解析し、フィレット径、仮想楕円の長径および短径を計測し、比較した。瘤径による影響を除くため、破裂例に対して瘤径をマッチさせた非破裂例を1:1で割り当てた。その結果、破裂例、非破裂例それぞれ20例を対象として、瘤径は破裂群62.1±9.69mm, 非破裂群63.2±8.90mmであった。計測された楕円長径/楕円短径比(=アスペクト比)は、破裂群2.00±0.564、非破裂群2.07±0.698 (P=0.270)、フィレット半径/楕円短径は破裂群0.270±0.217、非破裂群0.526±0.230 (P=0.0006) と後者にて有意な差を認めた。結論として、瘤頚部の屈曲が強く、瘤の立ち上がりが急峻なAAAは破裂リスクが高い可能性が示唆された。
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