本研究は浮腫におけるリンパ還流障害と静脈還流障害の関与をあきらかにすることである。当該年度ではこれまでのモデルにより得られた検体の分析を行うことを目標としてきた。モデルはラットのIVC結紮による静脈還流障害モデルと、われわれが従来作成してきたラットリンパ還流障害モデルである。 リンパ還流障害モデルおよび静脈還流障害モデルは、作成着手から病態の成立までの期間を要するため、これまでは主にこのモデルラットの作成を主体に研究を遂行してきた。期間を経て完成したモデルからは順次組織の採取を行ってきており、凍結保存して質量分析および免疫組織化学染織なのでの検討を行うことを目標としてきた。モデル作成から組織を採取するまでの期間を変えることで、病態の進行に応じた組織変化の推移も見ていくことも視野に入れていた。 当該年度は作成されたモデルから得られた組織を、質量顕微鏡を用いて検討することにより、皮下組織中の脂肪組織の編成や病態の評価(増加・減少している脂質やその局在)を、リンパ還流不全モデルおよび静脈還流不全モデルで比較する。それによりリンパ還流障害モデルでの静脈壁や周囲脂肪組織の編成の確認、また静脈還流障害モデルでのリンパ管や周囲脂肪組織の変化の確認を行っていく。そこから静脈性優位の浮腫、リンパ性優位の浮腫、混在性の浮腫などphlebolymphedemaの病態解明に近づけることをゴールとしてきたが、当該年度では得られた組織の質量顕微鏡や通常顕微鏡での組織検討には至っていない。
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