研究課題/領域番号 |
26462104
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 健 浜松医科大学, 技術部, 技術専門職員 (20397433)
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研究分担者 |
成 憲武 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30378228)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤(AAA) / 脂肪細胞 / アディポネクチン / レプチン / マクロファージ / 好中球 / B細胞 |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤(AAA)は破裂により非常に高い死亡率に達する重篤な疾患であるが、このAAAの形成・進展に関するメカニズムはあまり研究が進んでいないのが現状である。一方、血管周囲には脂肪組織が豊富に存在し、この脂肪細胞がアディポサイトカインを介して血管疾患、特に動脈硬化症の進展に関与することが示唆されているが、AAAの形成や進展に関しては不明である。このことから、本研究では、AAAの形成と血管周囲脂肪細胞の関連性を検討した。
その結果、正常大動脈とAAA病変において豊富な脂肪細胞が確認され、それらにおいてアディポネクチン(ADP)やレプチン(LEP)の発現が認められた。またそれらの受容体(ADP-R1、-R2、LEP-R)は、AAAにおける浸潤細胞に発現が認められたが、興味深いことにADP-R1、-2は正常大動脈の脂肪細胞にも多数の発現が観察され、それら発現はAAAにおいて減少していた。一方、LEP-Rの発現についてはAAAにおいて上昇していた。受容体の発現細胞については、ADP-R1は一部がマクロファージに発現が認められ、LEP-Rは一部が好中球に発現が確認された。以上の結果から、血管周囲脂肪細胞がアディポサイトカインやその受容体を介してAAAの形成・進展に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では腹部大動脈瘤の形成・進展におけるB細胞の関与メカニズムの解明を大きなテーマとしている。昨年度の研究から、B細胞のサブセットの一つであるIRA-B細胞様細胞の関与が示唆されたが、本年度は、そのIRA-B細胞様細胞を制御する因子について検討した。その一つとして脂肪細胞と脂肪細胞が分泌するアディポサイトカインに焦点を当てたが、これらの因子がIRA-B細胞様細胞を直接的に制御している可能性は低い結果となった。しかしながら、IRA-B細胞様細胞を間接的に制御する可能性が考えられ、さらには、今回検討したサイトカイン(アディポネクチンやレプチン)以外の分子によりIRA-B細胞様細胞が制御されていることも考えられるため、今後はこの点を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において、新たに脂肪細胞とその脂肪細胞から分泌されるサイトカイン(アディポサイトカイン)が腹部大動脈瘤の形成・進展に関yすることが示唆された。このような結果をもとに、今後は脂肪細胞によるB細胞(IRA-B細胞様細胞)の制御について検討し、腹部大動脈瘤におけるその系の関与をさらに追及する予定である。これとともに、アディポサイトカインの作用機序についても研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では我々が予測していた仮説と異なる結果が得られ、これにより当初の計画を変更せざるをえなかったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は変更した計画に則り、主にアディポサイトカインB細胞(IRA-B細胞様細胞))に対する影響や、その作用機序、さらには脂肪細胞の役割に関する研究を行う予定である。このため、研究費はこれらの研究に対する消耗品や、その研究情報を得るためや成果お発表するための旅費、研究遂行における謝金、さらには論文執筆等にかかる経費などに充てる予定である。
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