研究課題
腹部大動脈瘤(AAA)は腎動脈分岐部から腸骨動脈の間に生じるもので、直径5-6cm以上になると破裂の危険が高まるとされており、破裂した場合は非常に高い死亡率に達する極めて重篤な疾患である。しかしながら、このAAAの形成・進展・破裂に関するメカニズムについてはあまり研究が進んでいないのが現状である。現在までの我々の研究から、AAAの形成・進展には血管壁の中外膜に浸潤したマクロファージ等の炎症細胞(免疫細胞)とそこから分泌されるプロテアーゼによる細胞外マトリックスの分解が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。さらに進行したAAAでは、多数のB細胞や好中球等の免疫細胞の浸潤が観察され、これらの免疫細胞の関与や、そこから分泌されるプロテアーゼもAAAの形成・進展に関与していることが明らかとなった。一方、そこに存在するB細胞の中には、Innate response activator-B細胞(IRA-B細胞)と言われるものが存在し、このIRA-B細胞から分泌されるGM-CSFがマクロファージや好中球に存在するGM-CSF 受容体に作用し、これらの免疫細胞を制御している可能性を示した。さらに、これらの免疫細胞を制御するメカニズムとして、血管周囲脂肪組織血管周囲脂肪組織がアディポカインやその受容体を介して免疫細胞の活性化や浸潤をコントロールし、さらにはプロテアーゼの分泌を制御することにより、AAAの形成・進展に関与している可能性も考えられた。以上の研究成果から、AAAの形成・進展の抑制として、免疫細胞の制御、特にB細胞の活性化の制御や、そこから分泌されるサイトカイン・プロテアーゼの制御等に対する薬剤が有効になることが示唆された。今後は、血管周囲脂肪組織がAAAの形成・進展に関与するメカニズムをより詳細に調べることが課題になると思われる。
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