研究実績の概要 |
平成26年4月以降の3年間を通じて、腹部大動脈瘤の発症・進展におけるVasohibin-1の果たす役割について検討を行ってきた。今年度は以下のように行った。過去2年の研究結果から、腹部大動脈瘤の形成において、Vasohibin-1ヘテロノックアウトマウスのほうで致死率が高いという当初の予想に反して、野生型とヘテロノックアウトマウス群との間で差を認めなかったことから、組織中あるいは局所の細胞の中におけるタンパクやその活性のレベルでどのようなことがおこっているのかを検討した。まず、アンジオテンシンII(1,000ng/kg/min)4週間持続投与後の野生型およびVasohibin-1ヘテロノックアウトマウスの大動脈を剥離採取し、MMP-2やMMP-9、uPAやuPARの発現をザイモグラフィーおよびウェスタンブロットを用いて検討したところ、両群間で差を認めなかった。また、アンジオテンシンII(1,000ng/kg/min)4週間持続投与後の野生型およびVasohibin-1ヘテロノックアウトマウスの腹腔内マクロファージを採取し、MMP-9、MCP-1やIL-1βなどの炎症性サイトカイン、uPA、uPARなどの発現を比較したが、両群間で差を認めなかった。以上のことから、Vasohibin-1がpartialに欠損した状態では、AngII刺激存在下において、Vasohibin-1は腹部大動脈瘤の発症・進展に対して大きな影響を与えない可能性が示唆された。しかし、今回の検討において、Vasohibin-1のホモノックアウトマウスの作成が困難であったことからVasohibin-1の役割を完全に検討できたとは言えないと考える。
|