ラットでの脊髄虚血モデルを作成は、当初予定した方法での対麻痺発生率が低くかつ術死亡率が高いことから、モデル作成の方法を変更した。循環管理に関しては、系時的に、1)腹部大動脈の遮断、2)胸部大動脈のバルーン閉塞、3)頸動脈からの瀉血と返血、を検討して安定した循環動態を得ることに成功した。麻酔法は、1)皮下投与、2)腹腔内投与、3)吸入麻酔と変遷し、吸入麻酔の投与法も、1)気管切開、2)気管内挿管、3)マスク換気と変遷し、1週間以上生存するモデルの作成が可能となった。 仔ラット大腿より採取した間葉系幹細胞(MSC)をウシ血清培地にて継代培養し、1x10^8個として準備しておく。ラット脊髄虚血モデルを作成し、頸動脈よりMSCを投与する。覚醒後、下肢運動機能は低下しており、対麻痺の状態となる。MSC非投与群(PBS群)との比較検討を行った。下肢運動機能の評価は術後1週間まで行った。MSC投与群で有意に下肢運動機能の改善を認めた。脊髄の組織学的検索(TUNEL染色)にてMSC投与群での有意なアポトーシスの抑制と、RT-PCRにおいてPBS群でのBax/Bcl-2比の有意な上昇を認め、MSCに脊髄保護効果があるものと考えられた。 微重力培養したMSC 1x10^6個による脊髄保護効果を検討し、通常培養の1x10^8個の場合と下肢運動機能の改善に有意差を認めなかった。 トレハロースを静注した場合の有意性は、今のところ明らかではなく、今後の継続した検討が必要である。
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