研究課題/領域番号 |
26462111
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
末廣 晃太郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10569312)
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研究分担者 |
濱野 公一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60263787)
細山 徹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20638803)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 末梢血管障害 / 細胞移植療法 / アペリン / 末梢血単核球 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
我々のこれまでの研究において、末梢血単核球に低酸素刺激を加えると血管新生因子の発現亢進や虚血ストレス抵抗性の増加、細胞接着分子の発現亢進などが生じ、虚血組織における末梢血単核球の生着や血管新生の増加が引き起こされることを示してきた。しかし、形成される新生血管の多くは未熟であり、実臨床における劇的な治療効果は期待できない。そこで本研究では、機能賦活化した末梢血単核球の移植により虚血下肢組織内に形成された新生血管の機能的成熟化を促す目的で、血管成熟化因子アペリンの同時投与を試みることとした。本年度は、アペリンと末梢血単核球との直接的な関連性について検証するために、末梢血単核球のアペリンへの応答性にフォーカスして研究を進めた。結果、通常状態の末梢血単核球においてはアペリンレセプター(APJ)の発現が見られないが、低酸素培養することにより有意にその発現が亢進し、培地へ添加したアペリンへの反応性が増加することを見出した。また、アペリン添加により低酸素培養した末梢血単核球内でErkパスウェイが特異的に活性化すること、低酸素培養した末梢血単核がアペリン存在下でPDGF-BBおよびTGF-b1の分泌を促進すること、なども見出した。これらの結果は、アペリンが低酸素培養した末梢血単核球にも働きかけて細胞機能をさらに向上させる可能性を示している。来年度以降は、アペリンと低酸素培養した末梢血単核球の同時投与による虚血組織における血管網形成の効果についてマウス下肢虚血モデルを用いて検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初の計画通りアペリンと末梢血単核球との直接的な関連性について検証し、低酸素刺激することにより末梢血単核球におけるアペリン応答性が増すこと、またその際に、Erkパスウェイを介してPDGF-BBやTGF-b1発現を亢進することなどを見出した。末梢血単核球とアペリンとの直接的な関連性についての報告は過去になく、アペリンを併用した細胞移植療法の新たな方法論の確立へ繋がると期待される。次年度に行うマウス下肢虚血モデルへのアペリンと末梢血単核球の同時投与実験については、動物モデル作製法は本年度に既に習得しており速やかにin vivo実験へと移行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降には、マウス虚血下肢モデルによる血管成熟化と機能回復についての検証を進める。具体的には、低酸素培養した末梢血単核球とアペリンの同時投与実験をin vivoで進め、血管新生効果および成熟化効果などについて、レーザードップラー法や組織学的な検証を行う。また、in vitro血管形成モデル等を利用してその作用機序を明らかにし、本法の早期臨床応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で予定していた網羅的遺伝子発現解析を別の方法に代用したため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に行う予定の動物実験に新たな解析法を導入するため、本年度差額部分を補てんする予定である。
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