研究課題
横浜市立大学付属病院及び横浜市立大学付属市民総合医療センター病院で手術を施行された大動脈瘤症例の内、書面で同意が得られた症例の血液及び動脈瘤壁を検体として採取する。血液検体に関しては、我々が開発した、大動脈瘤症例において関連性が示唆される遺伝性疾患の責任遺伝子を網羅したリシーケンスアレーを用いて責任関連遺伝子を迅速かつ効率的にスクリーニングし、遺伝子機能や家系解析等からその病的意義を明らかにする。さらに病的な遺伝子異常・多型に基づいて臨床症状の評価を行い、リスク遺伝子異常・多型の臨床症状評価システムを確立する。また、大動脈瘤壁及び近傍の正常大動脈壁におけるEP4シグナル異常と瘤形成過程との関連を明らかにする。
1: 当初の計画以上に進展している
基礎的研究としては特異的な血管壁構造を持つ動脈管と大動脈壁との比較検討を行い、その動態についての検討を行った。まず、プロスタグランディンの一受容体の発現に関して動脈管組織においてはプロスタグランディンE2投与により、EP4のsignalingを介して動脈管組織のelastogenesisが抑制されることを証明した(Circulation 2014: 129; 487-496)証明した。また、動脈管の収縮に関しては血清浸透圧の変化が関与していることも証明した(cardiovascular Research 2014: 104; 326-336)。また、臨床的な検討としては致死率の高いA型大動脈解離について、入院症例では、60才未満では男性が、60才以上では女性が多いこと、解離腔が早期に血栓閉塞するのは高齢者に多く、心嚢内へ出血することが多いことを明らかにした。臓器の血流障害を26%に認め、全ての死亡率は15%であったが、手術を施行した症例では死亡率は10%であり、特に最近の手術症例の死亡率は5%にまで改善してきていることを明らかにした。また(日本血管外科学会雑誌 2015: 24; 127-134)。また、A型大動脈解離の手術においてsurgical glueの有用背について報告した(General Thoracic and cardiovascular Surgery 2014: 62; 207-231)。
現在動脈瘤発生因子の探索と治療薬の創薬に結びつけるためのプロテオミクス解析を進めており、候補タンパクの絞り込みをおこなっている。また、臨床においては遺伝子異常患者の大動脈瘤治療、特に若年者の治療を積極的におこなっており、その遠隔期成績について検討中である。
予定をしていた講演会が中止となり、講師謝金が発生しなかったため、繰越金が生じた。
当該研究にかかわる講演会開催の際の講師謝金(15万円予定)とし、H26年繰越金をH27年助成金とあわせて使用する予定。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
日本血管外科学会雑誌
巻: 24 ページ: 127-134
Circulation
巻: 129 ページ: 487-486
10.1161/CIRCULATIONAHA.113.004726
Cardiovascuar Reaseach
巻: 104 ページ: 326-336
10.1093/cvr/cvu199
General Thoracic and cardiovascular Surgery
巻: 62 ページ: 207-231
10.1007/s11748-013-0343-0