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2016 年度 実施状況報告書

数値流体力学に基づく大動脈二尖弁に合併する胸部大動脈病変の遺伝子解析

研究課題

研究課題/領域番号 26462117
研究機関自治医科大学

研究代表者

川人 宏次  自治医科大学, 医学部, 教授 (90281740)

研究分担者 木村 直行  自治医科大学, 医学部, 准教授 (20382898)
中村 匡徳  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード大動脈二尖弁 / 胸部大動脈瘤 / 網羅的遺伝子解析
研究実績の概要

先天性大動脈弁二尖弁は正常三尖と比較し高率に上行大動脈の拡大をきたす。その原因として二尖による異常血流が大動脈壁への高剪断応力として作用し、遺伝子レベルで結合織異常を発現させることが示唆されているが、その機序は十分に解明されていない。本研究では大動脈二尖弁症例 で上行大動脈置換+大動脈弁置換術を施行する症例を対象とし、術前MRI画像を基に数値流体力学計算 (CFD:computational fluid dynamics) による大動脈壁剪断応力等のマッピングを行い、高剪断応力部と低剪断応力部の大動脈壁摘出検体に対しDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行う。対照として移植ドナーの上行大動脈(正常上行大動脈)に対し同様に遺伝子解析を行い、血行力学因子の影響下に大動脈拡大をきたす大動脈組織の遺伝子群を同定する。
本学臨床研究倫理委員会の承認後、大動脈二尖弁症例の上行大動脈検体の収集をH26年度から開始し、これらの症例でCFDを用いた上行大動脈壁の壁剪断応力分布測定を行うとともに上行大動脈壁の病理学的検索を実施した。また、大動脈二尖弁の形態分析を行い、各々の二尖弁形態に特異的な異常血流と剪断応力の計測を行った結果、右回旋helical flowの検出と特徴的なWSS分布を同定するとともに、上行大動脈近位大彎側に高WSS部位が出現することを明らかにした。この成果は2016年5月の米国胸部外科学会で発表し、論文化した(J Thorac Cardiovasc Surg 2017;153:S52-S62) 。
また、CFDによる壁剪断応力分布図に基づき、高壁剪断応力部と低壁剪断応力部における大動脈内膜中膜組織の網羅的遺伝子発現解析を行い、壁剪断応力の変化により細胞外器質関連遺伝子(matrix metalloproteinase-13、-21、-25)の発現が変化することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大動脈二尖弁症例の胸部大動脈拡大の血流解析および血行力学因子分布マップの構築を行った結果、大動脈二尖弁の癒合形態によって特徴的な血流パターンが出現することが明らかになった。さらに、右回旋helical flowの検出と特徴的なWSS分布を同定するとともに、上行大動脈近位大彎側に高WSS部位が出現することを明らかにした。
また、CFDによる壁剪断応力分布図に基づき、高壁剪断応力部と低壁剪断応力部における大動脈内膜中膜組織の網羅的遺伝子発現解析を行った結果、壁剪断応力の変化により細胞外器質関連遺伝子(matrix metalloproteinase-13、-21、-25)の発現が変化することが明らかになった。

今後の研究の推進方策

H29年度も大動脈二尖弁症例のMRIデータに基づいたCFD解析と上行大動脈検体の収集を継続して実施する。Sievers分類で頻度の高い大動脈二尖弁はType 0 (ap) 前後型、Type1 (L/R)左右冠尖癒合型、Type1 (R/N)右無冠尖癒合型であるが、この代表的な3型それぞれからn=3検体程度追加収集する予定である。さらに壁せん断応力や振動せん断指数が胸部大動脈拡大と関連性のある血行力学的因子となりうるかを引き続き検討する。
さらに構築された血行力学因子分布を用いて以下の実験を引き続き行う。
1)DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析 (Agilent, SurePrint 63 Human GE 8 x 60k)を使用し高せん断応力下で胸部大動脈拡大に影響を及ぼす遺伝子群を同定する。2)validation study; qRT-PCR (SYBR)。3)validation study; 免疫組織染色。1)、2)に関しては共同期間である国立成育医療研究センターで行い実験の効率化をめざす。
さらに、得られたデータをまとめ、学会発表、論文作成にとりかかる。

次年度使用額が生じた理由

追加の遺伝子解析研究を引き続き本年度実施することとなったため、遺伝子解析研究に関連する研究予算を次年度に繰り越した。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は下記内容で研究費を使用する予定である。
Agilent gene chip: 300,000円、RNA抽出キット:200,000円、real-time PCR試薬:100,000円、旅費(欧州胸部外科学会)173,630円

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Patient-specific assessment of hemodynamics by computational fluid dynamics in patients with bicuspid aortopathy.2017

    • 著者名/発表者名
      Kimura N, Nakamura M, Komiya K, Nishi S, Yamaguchi A, Tanaka O, Misawa Y, Adachi H, Kawahito K.
    • 雑誌名

      J Thorac Cardiovasc Surg

      巻: 153 ページ: S52-S62

    • DOI

      10.1016/j.jtcvs.2016.12.033

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Patient-specific evaluation of hemodynamics in bicuspid aortopathy by means of magnetic resonance imaging based computational fluid dynamics simulation.2016

    • 著者名/発表者名
      5.Kimura N, Kawahito K, Komiya K, Numata N, Yamaguchi A, Misawa Y, Nakamura M, Adachi H.
    • 学会等名
      AATS Aortic Symposium 2016
    • 発表場所
      New York
    • 年月日
      2016-05-12 – 2016-05-13
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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