研究実績の概要 |
1) CFD解析による患者特異的なWSS分布に関する検討 大動脈二尖弁症例12例と陰性コントロール群3例の合計15症例において、PC-MRI計測に基づくCFD血流解析を行い、各症例における上行~弓部大動脈での血行力学因子の解析を行った。CFD解析画像(流線解析)では正常大動脈弁群は、大動脈弁を介して、上行大動脈内では長軸方向に非回旋性の血流パターンを呈する。これに対し、二尖弁群の大多数は、流速の早い右回旋の血流パターンを上行大動脈内に認めた。コントロール群は上行弓部大動脈でWSSの上昇は認めなかったが、三尖弁AS群・大動脈二尖弁群の全例でWSS上昇を認めた。特に大動脈二尖弁群では、上行大動脈の右側(大彎側)を中心にWSSの上昇を広範囲に認める症例が多かった。 2)二尖弁大動脈拡大例におけるWSS高・低部での大動脈壁内遺伝子発現解析 で確立したWSS mapping法に基づき、上行大動脈拡大(ASI > 2.75)を呈する二尖弁症例4例を対象として、WSS高・低部で内膜中膜組織を採取後、RNA(RIN値 > 5.0)を精製し、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を施行した。全4例において、有意な発現変動(> 2 fold change(FC))を認めた遺伝子群は、42,545遺伝子中257遺伝子(0.6%)であり、内訳は高WSS群で発現減弱:7遺伝子、発現増強:250遺伝子であった。複数の炎症関連のontology term が、高WSS群でdown-regulationしていた。また、blood vessel morphogenesisや extra-cellular matrix関連遺伝子も高WSS群で発現減弱を認め、 高WSS部位でMMP13(FC:2.0), MMP21 (FC:2.5), MMP25 (FC:3.1) の発現上昇が確認された。
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