研究課題/領域番号 |
26462118
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
荻野 均 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (60393237)
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研究分担者 |
湊谷 謙司 京都大学, 医学研究科, 教授 (20393241) [辞退]
安藤 太三 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70340247) [辞退]
中西 宣文 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (80164234) [辞退]
高木 靖 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80324432)
大郷 剛 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任部長 (80617077)
佐々木 啓明 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (50393236)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性肺動脈血栓塞栓症 / 肺高血圧症 / 肺動脈内膜摘除術 / 経皮的バルーン肺動脈拡張術 |
研究実績の概要 |
慢性肺動脈血栓塞栓症(CTEPH)は重症の肺高血圧症(PH)を伴い、進行性かつ難治性である。最近ではCTEPH治療薬が臨床導入され効果を上げつつあるが、依然として根治的治療法は肺動脈内膜摘除術(PEA)のみである。本邦では毎年50件前後の頻度でPEAが施行されているが、外科的に到達困難なCTEPH末梢型の頻度が高く海外とは異なる状況にある。一方、最近になりCTEPH末梢型、PEA後の遺残PH、CTEPH中枢型の手術困難例などに対して経皮的バルーン肺動脈拡張術(BPA)が臨床応用され、安定した良好な成績が得られている。カテーテル手技で簡便に実施できる利点もあり、BPA件数はPEAのそれを大きく上回る。しかしながら、両治療の適応は施設ごとに異なっており(実施不可能を含め)、実際の臨床の場で混乱を招いている.そこで、本研究は、①国内の主要PEA実施施設(4施設)においてPEAのレジストリー研究を行い、早期・遠隔成績の詳細を検討し更なる治療成績の向上をめざす。②PEAの早期・中期成績をBPAのそれと比較検討し、CTEPH診療ガイドラインへの提言を含め、最適な治療体系の確立をめざすことを目的とする。調査結果として、2014~2016年において、119例(全国症例数の2/3)のPEAが施行され、死亡率2.5%と良好で、耐術生存例において良好なPHの改善が得られた。一方、BPAに関しては、CTEPH末梢型を中心に298例と2.5倍の頻度で施行されており、死亡例もなくPHの改善が得られ安全性と有効性が明かとなった。また、PEA後の遺残PHやCTEPH中枢型の手術困難例に対してもBPAが施行され、良好な成績が得られている。したがって、CTEPH中枢型に対してはPEAを、CTEPH末梢型、手術困難例、PEA後の遺残PH例などに対してはBPAをと、適切な治療選択が重要と結論づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に関連するCTEPHに対する診療実績に関しては、2014年1月から2016年12月の3年間で、PEAは、東京医科大学2014年11例/2015年11例/2016年12例、計34例(手術・入院死亡なし)、藤田保健衛生大学(大雄会病院)15例/17例/17例、計49例(手術死亡1,病院死亡1)、国立循環器病研究センター 11例/9例/16例、計36例(手術死亡1)、計119例に施行された。この症例数は全国PEA総数(日本胸部外科学会年次集計:2013年62例、2014年61例)の約2/3に相当した。死亡率は2.5%であり、海外の主要なCTEPHセンターと同等の良好な成績が得られた。また、耐術生存例の全例においてPHの改善が認められ、中期的にも良好な成績が得られた。なお、東京医科大学において、2011年から2016年の53例中15例(28.3%)において術後遺残PHを認め、平均肺動脈圧<25 mmHgを目標にBPAを追加施行している。一方、BPAに関しては、東京医科大学 2014年0例/2015年7例/2016年19例、計26例(PEA後12例)、国立循環器病研究センター 84例/98例/116例、計298例(PEA前1例、PEA後43例)であった。共に死亡例を認めず,良好な成績(PHの軽快および症状・QOLの改善)を得た。特に、PEA後のBPAはある程度の頻度で必要とし、計画的(ハイブリッド治療)か非計画的(遺残PH)は別として、一連の治療手段としての安全性、有効性を示すものであった。結果的にCTEPH中枢型にはPEA、末梢型や残存病変にはBPAとする方針に変わりはないが,境界領域に対する両者の適応と成績,新しい治療であるBPAの中長期成績が更なる検討課題であり,追加で調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
当研究のレジストリに関するデータベースに関しては、最近の国際CTEPH協会(International CTEPH Association)によるBPAを含めた詳細なレジストリの原案があり、本研究においてもそれに合致した本邦版のデータベースを新たに作成したため,現在も症例登録の段階にあり、研究期限を延長し登録を実施している。CTEPH治療の主要施設である3施設(うち2施設は,PEAとBPAの両治療法を実施)が共同で本疾患に対する治療を積極的に行うと同時に、本レジストリ研究における患者登録を推進し、日本肺高血圧・肺循環学会と共に、全国規模のレジストリに発展させる予定である。また、今年度より、国立循環器病研究センターが中心となり、別の公的資金(AMED)の援助の下でBPAのレジストー研究が始まり、当施設のBPAに関してはそちらに登録予定である。そこで、本レジストリーはPEAのレジストリーとして、新たに2主要施設を加え規模を拡大し発展させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例数が限られており、研究が予定よりやや遅れている。また、そのためもあり、28年度に予定していた学会発表を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017/6/9,10のベルギーでのInternational CTEPH Associationへの参加補助(発表予定)。 および、同様のレジストリー研究、特にPEAに特化した登録研究を継続する予定(施設追加予定)である、研究費の残りをその事務的費用にあてる予定。
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