研究課題
慢性肺動脈血栓塞栓症(CTEPH)は重症の肺高血圧症(PH)を伴い、進行性かつ難治性である。最近になりCTEPH治療薬が導入されたが、依然として根治的治療法は肺動脈内膜摘除術(PEA)のみである。本邦では毎年50-60件のPEAが施行されているが、外科的に到達困難なCTEPH末梢型の頻度が高く、海外とは異なる状況にある。一方、最近になりCTEPH末梢型、PEA後の遺残PH、CTEPH中枢型の手術困難例などに対し経皮的バルーン肺動脈拡張術(BPA)が臨床応用され、安定した成績が得られている。簡便に実施できる利点もあり、BPA件数はPEAのそれを大きく上回る。両治療の適応は施設ごとに異なっており、実際の臨床の場で混乱を招いている.そこで、本研究は、①国内の主要PEA実施施設(4施設)においてPEAのレジストリ研究を行い、早期・遠隔成績を検討し更なる治療成績の向上をめざす。②PEAの成績をBPAのそれと比較検討し、CTEPH診療ガイドラインへの提言を含め、最適な治療体系の確立をめざすことを目的とする。結果として、2014~2017年に163例(全国症例数の2/3)のPEAが施行されていた。30日死亡率0.6%、入院死亡率1.8%と良好な結果であり、有意なPH、QOL(WHO機能分類)の改善が得られていた。一方、BPAはCTEPH末梢型231例に対して施行されており、死亡例もなく、複数回の処置がいるものの、PHの有意な改善が得られ、その安全性と有効性が明らかとなった。また、多くはないが、PEA後の遺残PHやCTEPH中枢型の手術困難例に対してもBPAが施行され、良好な結果につながっていた。したがって、CTEPH中枢型に対してはPEAを、CTEPH末梢型、手術困難例、PEA後の遺残PH例などに対してはBPAをと、病変部位やリスク評価から判断された適切な治療選択が重要と結論づける。
すべて 2017
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