研究課題/領域番号 |
26462119
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
笠島 里美 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, 臨床検査科長 (20444200)
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研究分担者 |
尾崎 聡 金沢大学, 保健学系, 助教 (40401921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / 自己免疫異常 / 動脈疾患 |
研究実績の概要 |
目的;IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、血清IgG4値高値、組織のIgG4 陽性形質細胞浸潤を特徴とする原因不明の線維形成性病変である。本疾患は血管でも生じ、多くは炎症性大動脈瘤、動脈周囲炎を呈する。IgG4-RDの病因として、局所でのヘルパーT細胞のバランスの乱れが注目されており、その結果、種々のサイトカインが放出され、線維増生やIgG4陽性形質細胞の増加が起きると推察されるが、血管でのIgG4-RDの病因は未だ不明である。本研究では、サイトカインバランスに注目し、IgG4関連血管病変の病態機序を解明する。 対象;大動脈瘤手術切除例からIgG4関連大動脈瘤(IgG4-AA)10症例選択した。対照症例として、IgG4-AA基準を満たさないnon-IgG4-IAAA 5症例、動脈硬化性AAA (aAAA)10例、動脈硬化性変化が軽度で動脈拡張のない解剖症例(autopsy)10例の3群を選択した。 方法: 1.IgG4関連血管病変の血清におけるサイトカインの測定:Th2優位の環境下を示すIL-4, IL-5, IL-13、制御性T細胞の亢進によるIL-10、TGF-β、線維化の目安となるIFN-γ、炎症の中心となるIL-6、血清IgG4、血清IgEも測定した. IgG4-AAでは,血清IL-10, IL-13, IL-6が優位に高値であった。血清IL-10, 血清IL-13では,基準値よりも上昇した症例はIgG4-AAでのみ見られた。 2.IgG4関連血管病変の組織の免疫染色:IgG4-AAの血管外膜の多角形から短紡錘形細胞に、IL-4, IL-6, IL-10, IL-13が多数陽性であり、aAAAおよびautopsyより優位に高値であった。IgG4-AAとNon-IgG4-IAAAとの比較では、IL-10のみが優位に差があった。また,好塩基球のマーカー(c-kit、IgE)、 線維芽細胞のマーカー(CD34)、 組織球マーカー(CD68、 CD163 )の比較でいずれもIgG4-AAではaAAA、autopsyよりも優位に高値であった。IgG4-AAとNon-IgG4-IAAAとの比較では、CD34、IgE、CD163が優位に差があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、IgG4-AAならびに対象群3群の症例選定が進み、4群での血清でのサイトカイン値の測定、組織での免疫染色を用いたサイトカイン発現およびサイトカイン発現細胞の同定、比較まで進達した。当初、大動脈壁におけるサイトカイン発現細胞の同定のために、蛍光二重免疫法を予定していたが、蛋白質のみならず、mRNAレベルでの発現を同定可能なmRNA-ISHへ方法を変更し、条件設定中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、大動脈壁におけるサイトカイン発現細胞の同定のために、蛍光二重免疫法を予定していたが、蛋白質のみならず、mRNAレベルでの発現を同定可能なmRNA-ISHへ方法を変更し、条件設定中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
血管病変のサイトカイン発現細胞の確認は,当初は蛍光抗体法による二重免疫蛍光抗体法を予定し,その為蛍光顕微鏡を申請していた.蛍光抗体法は,発色後すぐに消退し,また蛋白質発現の確認に留まる.そのため,実際には,より高感度で安定生の高いmRNA ISHにちるう検討に変更した,しかしながら,新規検討のmRNA-ISHの条件設定は簡単ではなく,備品,消耗品購入の為に平成26年度の研究費の支出が予定を大きく超過した.現在,概ね条件設定ができたので,平成27年度は対象症例に対して.mRNA-ISH施行を推進すべく,試薬購入の為に前倒し支払い請求をした.
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次年度使用額の使用計画 |
新規検討のmRNA ISHは,現在,概ね条件設定ができたので,対象症例に対して.mRNA-ISH施行を推進し.サイトカイン発現細胞を確認し.IgG4関連血管病変のサイトカインバランスの局所での状態を解明する.
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